馳星周「少年と犬」文藝春秋(2020)

「犬」繋がりで読む。馳星周は「不夜城」などハード系小説を何冊か読んだ。そんな彼が直木賞をとった作品がこれ。短編が連なりひとつの話になっている。昔やんちゃしていたクラスメートがすっかり好々爺になっているような作品だった。出て来る人物が訳あり…

湯を沸かすほどの熱い愛(2016)

宮沢りえ主演の映画。ダメダメの夫がオダギリジョー、学校でイジメにあっている娘が杉咲花。夫が蒸発して銭湯を休業している中年ママが宮沢りえ。強く逞しく美しい母はイジメられている娘を根気よく励ます。ある日母親に病気が見つかる。それを境に、夫が知…

伊吹有喜「犬がいた季節」双葉社(2020年)

学生時代の友人に教えてもらった本。時代設定が平成の初め頃、自分のことも思い出しながら懐かしく読んだ。ある高校に迷い込んだ犬を学校で飼うことになり、その犬を交えた話が時代の変遷と共に描かれている。ほどよい緩さと切なさで語られていて心地よい。…

イングリッシュ ペイシェント The English Patient(1996米)

「英国人の患者」という邦題でも良かったかもと思った。ラストになってタイトルの意味するところが分かり、そもそも邦題ならもっと印象的だったのではと思ったからだ。映画は第二次世界大戦下のヨーロッパ。重症を負った英国人の患者を献身的に看護する看護…

アンネの日記 The Diary of Anne Frank (1959米)

イスラエルとハマスの戦いが続いている。パレスチナへの同情的なムードが多い中、イスラエル側の人が言っていた言葉を思い出した。「過去のユダヤ人のことは皆知っているが、今のユダヤ人には誰も関心がない。」と。私の中のユダヤ人もアンネの日記からあま…

哀れなるものたち(2023英アイルランド米)

とても面白かった。映像も脚本も素晴らしいし。美術も衣装もとてもオシャレ。主演のエマ・ストーンがなにより素敵。久しぶりに100点をあげたくなる映画だった。時代は近代。天才外科医が臓器移植して作り出した女性ベラが解放、成長していくSFファンタジー?…

ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男 Darkest Hour (2010英米)

思ったよりも面白かった。名前は知っているが、実際に何をした人なのか全然知らなかったからだ。これを見てから、クリストファー・ノーランの「ダンケルク」を見に行けば良かったと思った。映画は第二次世界大戦、ドイツがフランスを追い詰め、イギリスはチ…

坂元志歩著・大阪大学蛋白質研究所監修「いのちのはじまり いのちのおわり」化学同人(2010年)

友人の著書。発売当時に購入したのだが、難しすぎて放置してあった。ここ最近の読者習慣のおかげで今なら読めるのではないかと思い頑張った。あらためてこんな難しい本を書いた友人を尊敬した。多少なりとも内容が理解出来たことも嬉しかった。自分が生まれ…

コッホ先生と僕らの革命(2011年独)

ドイツ映画。第一次大戦前の古臭い体質の学校が舞台。イケメンの英語教師コッホ先生がサッカーを通じてガチガチに躾けられていた子どもたちを解放、成長させていく話。コッホ先生はドイツにサッカーを紹介した人らしく、「サッカーの父」とも言われているら…

「ふしみ御殿あつらへ」小袖裂と復元小袖 丸紅ギャラリー

日曜日は閉館だったので仕方なく平日の昼間に来た。頂いた招待券で初めて丸紅のビルに入った。ここで働くエリート社員の人たちはどんな人生を歩んできているのだろうかと想像を膨らませながら会場へ。長い廊下は片側に丸紅の歴史が説明してあった。その奥に…

中平卓馬 火 氾濫 国立近代美術館

予定がなくなり、竹橋で時間が出来たので、見に行くことにした写真展。亡くなって9年ほど経つ中平卓馬さんという写真家の回顧展。予備知識ゼロで、名前さえ知らずに入ったら、モノクロでピンボケか、アートなのか、よくわからない写真が一杯だった。これが…

ライオン 25年目のただいま Lion(2017豪米英)

初めて見たのは飛行機の中だった。今回で3回目。何度見ても主人公の少年時代のサルーがかわいいし、養母のニコール・キッドマンが素晴らしい。インドの貧しい家庭の少年が迷子になってそのまま孤児に。その後オーストラリアの夫婦の養子になって成人。Googl…

福田恆存「私の幸福論」ちくま文庫(1998)

義父から貰った当時も読んだが、何も覚えていないので再読。元々は1956年に書かれた「幸福への手帖」がもとなので古い著作である。今の時代にそぐわない部分もあるが、なかなか面白かった。最初に美醜の話で、見た目に人が左右されるのは仕方ないから諦めな…

カリートの道Carlito's way(1993米)

アル・パチーノとブライアン・デ・パルマ監督の映画。麻薬組織ギャングだったアル・パチーノ演じるカリートが小賢しい弁護士のおかげで長い懲役刑から免れ自由になる。もう悪事には手を染めずサッサと引退してレンタカー屋をして余生を楽しもう。そう思って…

遠い太鼓Distant drum (1951米)

村上春樹の小説の映画かと思って録画していたのかもしれない。見たら全く違う古い古い映画だった。ゲーリー・クーパーが主人公でイケてる将軍を演じ、先住民の捕虜になっている白人たちの救出に奮闘するお話。ひねりは全くない。先住民が乱暴で無知な存在と…

ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書The Post(2017米)

メリル・ストリープとトム・ハンクスが主演。監督はスピルバーグ。ちょっと見ておこうかなという気がしたのは、昭和の人間だからだろうか。ベトナム戦争時の最高機密文書が盗まれ、それが明るみに出るまでの攻防のお話。新聞社同士の駆け引きや、政府関係者…

NHK「透明なゆりかご」2018年初回放送の再放送

今回の再放送を入れると見るのは3回目かもしれない。何度見ても涙する。主演は清原果耶。海辺の産科でアルバイトを始めた看護学生アオイが体験するいのちの物語。産科のお医者さんが瀬戸康史。婦長さんが原田美枝子、先輩看護師が水川あさみ。アオイの母が…

「小説家を見つけたら」Finding Forrester(2000年米)

ずっと以前に録画した映画。なぜ録画しようと思ったのかはもう忘れた。映画開始早々から目が離せなくなったのは主演の青年の表情のせいだ。なんとも言えないナイーブさと明るいふてぶてしさが同居した、いい顔なのだ。お話は文壇から姿を消した伝説の小説家…

万作萬斎狂言公演「萩大名」「小傘」パルテノン多摩

野村家三代の狂言。万作さんは90才を越えてなお舞台を踏んでいる。驚くべき人間国宝で、萩大名の大名を演じる。萬斎さんと息子の裕基さんは小傘を演じ、2つとも新年らしく楽しい狂言だった。始まる前に、石田幸雄さんから狂言の説明があった。伝統芸能を見…

角川文庫編「ビギナーズコレクション 源氏物語」(2011年初版)

大河ドラマの影響で、源氏物語を読みたいと思った。いきなり瀬戸内寂聴さんの現代語訳本に行くのはと思い、こちらを読んでおくことにした。そもそも、源氏物語は高校生の頃に読んでいる。大和和紀さんの「あさきゆめみし」という漫画でだ。大筋と人物相関は…

根津美術館「企画展 繡と織 華麗なる日本染織の世界」

表参道に行くので久しぶりに根津美術館を訪れた。入口に続く長い廊下は、左が竹垣、右が笹で既に美しい。企画展は着物の刺繡と織物。上代から明治までの布や着物が並ぶ。上代の裂(きれ)と呼ばれる布の切れ端から絢爛豪華な能衣裳まで、これを眼福というの…

フジTV「婚活100本ノック」

全然期待していなかったが、とても面白かった。主人公が「3時のヒロイン」福田麻貴さん。このドラマで初めて知ったが、彼女がいい。なによりリアリティがある。永野芽郁ちゃんではこうはいかない。お話は33歳の官能小説家南綾子が婚活という戦国をいかにして…

「PERFECT DAYS」(2023日本・独)

役所広司さん主演のヴィムベンダースの映画。東京のトイレ掃除をする初老の男性の日常を描いている。主人公平山さんは毎日繰り返される地味な日常を楽しんで生きている。木漏れ日を見上げ、木漏れ日の写真をフィルムに撮る。現像した写真は選別され、箱に入…

井筒俊彦「イスラーム生誕」中公文庫(1990年初版)

井筒俊彦さんと言えば、三十を越える語学を操る知の巨人。恐る恐る本を手に取ったが、予想以上に分かりやすくて感動した。本書は2部構成で、第1部が「ムハンマド伝」、第2部が「イスラームとは何か」だった。第1部は昭和27年初版、青年の著者が書いたもの。…

山極寿一「暴力はどこからきたか」NHKブックス(2007)

ゴリラの研究者山極先生の本。素人にはちょっと難しかったが、それでもチンパンジーやオランウータン等との比較は面白かった。暴力がどこから来たかという本題が、少し弱く感じられたのは私の読解力の限界だね。2007年の本だが15年余りたって一層世の中は殺…

群ようこ「着物がきたい」角川文庫(令和5年)

「着物が着たい」というタイトルに惹かれて読んだ。軽いエッセーを期待していたので、ガチの着物相談に戸惑った。自分の無知をあらためて知り凹んだ。巻末にある注釈では全然足りなかったし、写真やイラストでもあればもっと勉強になったのにと、ひとしきり…

テレビ朝日「ゆりあ先生の赤い糸」

菅野美穂のドラマ。突然寝たきりになった夫に田中哲司。夫の若い彼氏に鈴鹿央士。夫の愛人で、子連れの彼女に松岡茉優。無責任な小姑に宮澤エマ、半分ボケてる風の姑に三田佳子。豪華な配役のホームドラマ。新しいのは、この全員で夫を介護しようというとこ…

日本TV 水曜ドラマ「コタツがない家」

好きなドラマは重なる。「パリピ孔明」の裏の小池栄子のホームドラマである。夫が吉岡秀隆で、父が小林薫。セリフ回しといい、展開といい、毎回楽しい。子どもの頃、家族揃って家でテレビを見ていたのを思い出す。お話は今どきの首都圏のよくある家庭が舞台…

リチャード・リーキー 岩本光雄訳「入門 人類の起源」新潮文庫(昭和62年)

今更、人類進化の話を読んだ。東アフリカではお馴染みのリチャードリーキーも、私は名前しか知らなかったからだ。写真がたくさん入っている文庫で、訳がいいのか、面白くてページがぐいぐい進んだ。楽しみながら、人類進化の勉強が出来て得した気分になった…

キラーズ オブ ザ フラワームーン(2023米)

ディカプリオとマーティンスコセッシ監督の新作。3時間半近くある大作だった。アメリカ先住民が油田を発見したところから映画が始まる。金持ちになった先住民と結婚して富を得ようとする白人達のお話。最初ディカプリオが登場してきた時、竜雷太に見えた。…