谷川俊太郎 大岡信を悼む詩

朝日新聞折々のうた大岡信さんが亡くなった。新聞が手近にあった頃は時々読んでいた。短い文章の中に世界を凝縮昇華させる詩人はあこがれだ。大岡信の逝去に、谷川俊太郎が、朝日新聞に追悼の詩を書き下ろした。「本当はヒトの言葉では君を送りたくない。砂浜に寄せては返す波音で 風にそよぐ木々の葉音で・・・」と。ヒトの言葉で表現を尽くしてきた詩人だからこそ、ヒトの言葉では送りたくないか。「ヒトの言葉より豊かな無言」で送るのだ。しみた。生死は常にそこにある。特別なことではない。今もどこかで誰かが生まれ、どこかで誰かが息絶える。生死を分けるのは神の領域だ。残酷だろうが、突然だろうが関係ない。一切を飲み込んでいくのが天の力だ。生命の尊さや、哀しみ、いとおしさは、だからこそ存在するのだろう。同じ「言葉」で格闘した詩人が、詩人に送った言葉には、春らしい暖かみと、まだ肌寒い風に晒される心細さを感じた。谷川俊太郎の魂の声かもしれない。合掌。