特別展 「運慶」 興福寺中金堂再建記念特別展 東京国立博物館平成館

東京国立博物館の「運慶」は予想通り混雑していた。博物館の奥にある平成館で開催中。「平成」も今年で29年。あと1年なのかと思うと感慨深い。どこの展覧会でもそうだが、入り口付近は混んでいる。まずは大日如来座像がお出迎え。運慶20歳の作品。奈良の円成寺からのお越し。蓮の上に背筋を伸ばして座る大日如来。その周りに群がる人間たち。押し分けやっと尊顔を拝むと、恥ずかしくなるくらい仏は静かに祈っておいでだ。曼荼羅の中心にある大日如来。宇宙のエネルギーはすべてここから始まっているのだろうか。弱冠20歳の運慶がこんな静謐な仏を彫るのかと愕然とした。次々と現れる仏像は今にも動き出しそうであり、永遠に沈思黙想する静けさもある。観音様や菩薩様が纏う布の滑り落ちそうな質感や、毘沙門天多聞天の武具の重量感。見ていくほどに仏の世界にぐいぐい引き込まれる。なかでも丸く張ったふくらはぎや二の腕が美しい。しなやかでたくましいのだ。今回の展示された仏像のいくつかは、CTスキャンをかけてみると、中に経典やら木札が入っていたことがわかったらしい。仏像の体内で眠る経典や木札。1000年を越えてその存在をあらわす遥か古の人々の祈り。会場を出るころにはすっかり仏の掌でもて遊ばれたような気になった。運慶らの仏像に仏が入り、その仏像を見る私に、自らの仏が目覚めたのかもしれない。天才仏師「運慶」の世界。いやはや時代は後退しているのかもしれない。