タクシー運転手 約束は海を越えて (2017 韓国)

韓国で大ヒット、1200万人を動員したという映画。光州事件のお話。ビンボーなタクシー運転手が高額のギャラに惹かれてドイツ人ジャーナリストを乗せてソウルから全羅南道の光州に行くという話。タクシー運転手を演じるのが韓国ナンバーワン俳優のソン・ガンホ。どこにでもいそうな普通の韓国人の中年男性。奥さんを病気で亡くし11歳の娘と暮らしている。娘に新しい靴さえもなかなか買えない冴えないパパ。光州で起こっていることなどなにも知らぬまま、片言の英語でドイツ人と光州に入る。光州は既に軍が支配していた。戒厳軍が学生を虫のように殺していた。目の前の惨劇に、何も知らなかったタクシー運転手は驚き怯える。最初は学生中心だった民主化運動。学生を弾圧する軍の暴力に、市民が耐えられず、怒り、抵抗を始める。警察軍部は交通と通信を遮断。光州の惨劇はソウルの人間さえ知らない。ドイツ人ジャーナリストとの決死の脱出。スリリングに細やかに描かれる。ソン・ガンホはじめ俳優陣の演技が凄い。ストーリーも面白い。80年代の韓国の風や匂いが画面から溢れてくる。光州事件の予備知識がなくても胸が詰まった。80年代の韓国近代史。今の韓国の若者だって知らない人は多いのかも。歴史は大事。時代を見る力は歴史で育まれる。日本でも、こういう映画あるのかなあ。歴史に向き合うチャンス、ぼ〜っと生きてると、簡単にスルーしてしまう。こんな大人じゃいけない。そのうち本当にチコちゃんに叱られそうだ。