植田正治写真美術館 「山陰にて」

米子の駅から20分ほど車で行くとある。大山がきれいに見える場所だ。灰色のコンクリートの建物がぽつんと緑の真ん中にある。写真家植田正治のことは福山雅治が好きだということで知った。テレビの日曜美術館でも取り上げられていた。少し時間が出来たのでやってきただけ。でも写真を見ていくうちに好きになった。鳥取砂丘を背景にしたモードな写真だった。ちょっとあざといなと思ったが、それ以上に洗練されていた。陰影の深い写真に心が動いた。鳥取の境港出身の植田正治はもともと画家になりたかったそうだ。山陰の風景をキャンパスにしたんだね。子どもたちの写真もよかった。昭和の懐かしい時間がそこにあった。でも古い感じはしない、今っぽい。見る人を微笑ませたり、微かにしみる写真たち。一枚一枚に植田正治の工夫や創意が凝らされている。どの写真にも音楽が流れていて映画みたい。館内のミニシアターの15分の番組が終わると、壁の前上部にある丸窓がレンズになって、外の景色が後の壁に逆さまに映り込む。きれいな大山がミニシアターの壁に現れる。走る車が逆さになって動く。ふふふ。面白い。2階の展示室の間にある大きな窓からも大山が見える。手前の水面に大山が映り込んで正面に座ると一枚の絵になる。フレームの大山の前でポーズを撮れば、そのまま植田正治風の写真になる。ふふふ、これも素敵。外に出て建物の前に座れば、またまた大山がきれいにおさまる。どこまでも写真を意識させてくれる。思いもかけず素敵な美術館だった。山陰。キュンと来る場所だったなあ。