井上ひさしほか著 文学の蔵編 井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室 新潮文庫(平成14年)

井上ひさしが亡くなって8年。すっかり存在すら忘れていた。この本は一関で開いた彼の作文教室の文庫化。井上ひさしにちゃんと教えてもらえば、私もうまくなるかなと思って読み出した。作文教室は原稿用紙の使い方から始まった。知らないこともたくさんあった。題のつけかたなど、さすが日本語の達人。指導は的確だ。読み終えて、ちょっと分かった気がしたが、それは錯覚だろう。でも文章を書く面白さを思い出した。何か書きたくなった。さすがだ。井上ひさし井上ひさしの舞台は何回か見ている。泣き虫なまいき石川啄木、頭痛肩こり樋口一葉と、今でも題名がすらすら出てくる。面白くて、切なくて、見終わったあとにしみじみ感じいる舞台だった。難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く。井上ひさしはまさに易しく深く面白かった。懐かしい気分も手伝って井上ひさしウィキペディアなどを読んでいると、DV問題が書いてあった。今だったら大問題だね。彼の舞台も、本も姿を消したかもしれない。それにしても暴力の告発はあとをたたない。暴力的な指導や人間関係の中で大記録や傑作は生まれているのかもしれない。暴力の被害にある人には1日も早く逃げてほしい。暴力にとりつかれた人は早く振り上げた手を下ろせる日が来ることを願う。弱い者が弱い者をたたく世の中が早く終わりますように。敵はその人じゃない。