よしもとばな「ゆめみるハワイ」幻冬舎文庫2015年初版

ハワイ好きの友人から読んで欲しいと言われた。私がハワイ島在住の男性と知り合ったと告げたせいだ。ハワイ島のコナに住むその男性とはその後大した進展はない。近い将来私がハワイ島に行くかどうかは全くわからないが、「ゆめみるハワイ」はそんな曖昧さもゆったりと包み込むような本だった。よしもとばななは「キッチン」「TUGUMI」以来だった。あの頃のばななさんは牧瀬里穂がいる世界だった。キラキラ小さく光る星みたいだった。だが月日は流れ、いつしか私にはキラキラの片鱗さえ見つけられない。歳月は平等だ。ばななさんも年をとった。最近のばななさんは「フラ」をやっていて、ハワイと大変愛をしている。「ハワイ」本が書けるほどの熱烈ぶりで、ハワイにも存分に愛されているみたい。この本はその愛の記録なのかもしれない。多くを語りはしないけど、じわっとする話だった。愛することを怖れてはいけない。そのまま生きていればいい。どんな「わたし」でも包み込む力がハワイにはあって、自分はいつでもそこに行けばいいのだ。そんな風に言っている気がした。ばななさんが静かに、全力で言っている気がした。ハワイ島の彼とはご縁はなくても、ハワイには行こうかな。ハワイ、ハワイ。そう唱えればいろいろ乗り越えられる気がする。愛は奇跡、エネルギーの源だ。