日本刀の華 備前刀 静嘉堂文庫美術館

美術館へ続く坂道、タクシーが次々と追い越して行く。今日は最終日。幸いにも招待券のおかげで長い列に並ぶことなく入館した。よーし、今のうちだ。人が少ないうちにしっかり見よう。しかし、刀剣の展示を見るのは初めて。残念ながら勝手がわからない。刀に添えてある説明書きがまた分からない。仕方ないので、見どころのイラストを手立てに、ただじっと眺めている。刀の腹に現れるふしぎな薄雲のような模様を見る。光線の加減で三日月が浮かんで見えた。嬉しい。しばらく眺め続けていると、あら不思議。なんとも言えない気持ちになる。日本刀は、もともとは戦いの道具だったが、やがて平和な時代になり、身分や権威を示すものになった。触っただけで血が出るほど研きあげられた刃をのぞき込んでいるうちに変な妄想が浮かぶ。冷たい刃に熱い血がしたたり落ち、斬られた体からは湯気があがる。手に持つ刀は赤く染まりながらも涼しげに光っている。美術館でお行儀よく並ぶ刀剣たちは本当に綺麗だ。私の妄想などとは全く別世界にいるようだ。初めての日本刀の鑑賞。思いもかけず日本刀たちが饒舌なのに驚いた。また刀を見に行こう。