有吉佐和子「三婆」 新潮文庫 昭和52年初版

ドラマにもなった「三婆」は案外短い作品だった。この短編集はどの作品も面白いのだが
終わりがちょっとあっけなかった。「三婆」は、ある金持ち男の本妻と妾、未婚の妹の晩年のお話 。3人の女は形は違うが、男に養われていた。昔はね、女の人はひとりで生きてはいけない時代てした。その3人が金づるの男が死んで一緒の敷地内に暮らすようになるのである。互いにいがみ合って暮らしていたのだが、老いが深まり、やがて寄り添い 朽ちていく。これが書かれたころは、女が60歳といえば、もうしっかりおばあちゃんだった時代である。今からは隔世の感がある。だからといって格別不幸だったわけではない。いつまでも老いることなく、小綺麗にはつらつと生きることを是とする今が、幸せ満点というわけでもないように 。老いて無残な姿をさらすことは現代の恐怖である。老醜とは無縁でいたい気もするが、やがては老醜に追いつかれる。じたばたするのも居心地の悪いが、何もしない怠慢にも勇気がいる。 老いても魅力的に 老後資金の2000万円も確保して、理想の死に向かって一生懸命頑張ることが必要らしい。なんか絶望的ね気持ちになるが、せいぜい死ぬチャンスを逃さないようにしなきゃね。