阿刀田高「殺し文句の研究」新潮文庫(平成17年)

阿刀田高さんのエッセイ集。比較的若い頃の作品が詰まっている。作品目録が巻末についている。売れっ子作家の阿刀田高さんは国会図書館勤務経験者。サラリーマン生活を経験しているせいか、読み手のすぐ近くにいる普通の人だという印象がある。重くならず、…

佐藤愛子「九十八歳。戦いやまず 日は暮れず」小学館(2021年)

話題の本だったが、手に取ったのは初めて。佐藤愛子さんは今年で98歳なんだ。まさに生涯現役。女性セブンに連載しているものをまとめたらしい。字が大きい。98歳になろうとする作家の語る話はリアリティがある。老いを恐れてジタバタする時代もとっくに過ぎ…

ドライブ・マイ・カー(2021年)

やっと見に行くことができた。見られて良かった。3時間の長尺だが、もう一回見たい気もする。主演は西島秀俊。演劇の役者兼演出家の家福さんを演ずる。愛車サアブは赤くて多摩ナンバー。車が終始登場するこの映画、赤いサアブも重要な出演者だ。その車を運…

ヘミングウェイ短編集(一)大久保康夫訳 新潮文庫(昭和45年初版)

ヘミングウェイは大学の英語の授業で読んだことがある。当時、田舎の大学へ神戸から通っていた美人の先生は、ヘミングウェイなら、私たちでも読めると踏んだのだろう。「インディアン部落」はそのとき読んだ記憶がある。「キリマンジャロの雪」は、アフリカ…

立花隆「サイエンス・ナウ」朝日文庫(1996年)

「科学朝日」に連載中だったのが、1989年だったとすると、これは今から32年前の「サイエンス・ナウ」である。30年前の科学の最前線の研究を立花隆が紹介している本である。科学の研究自体は素人には難しすぎてよくわからないのだが、立花隆が非常にわかりや…

立花隆「マザーネイチャーズ・トーク」新潮文庫(平成8年)

先日お亡くなりになった立花隆さん。文春で特集されていたので読んでみた。この本は雑誌に連載された対談集をまとめたもの。今から25年前の本。対談相手がまた一流の方々で、その中で、河合雅雄さん、日高敏隆さん、多田富雄さん、河合隼雄さんは私も知って…

星新一「宇宙のあいさつ」ハヤカワ文庫(昭和48年初版)

この本もショートショート。これが一番気に入った。やっと星新一に慣れたのかもしれない。慣れる前に諦めなくて良かった。多少の我慢が悦楽への道。大きく飛ぶ前は低くしずむだ。世の中の事象は見方を変えれば、悲劇は喜劇で、その逆もあり。とかく自分の不…

星新一「悪魔のいる天国」新潮文庫(昭和50年初版)

ショート・ショートの作品集。星新一といえばこれ。題名が示す通り、毒が聞いてて、読み終えるたびに、シャキッとした気持ちになる。このクールな眼差しが魅力なのだが、私はもう少し湿気があるのが好きだ。イラストが内容にピッタリで、どこかすっとぼけた…

「竜とそばかすの姫」(2021年)

細田守監督の新作。今回もまあまあ。彼の映画は、絵、特に色彩が好きだ。今回は幼くして母親を失って、歌が歌えなくなった少女すずが歌い出すというお話。仮想現実のUという世界で、すずはアバターのBELLになる。BELLは歌える。素晴らしい歌声であっという間…

星新一「宇宙の声」角川文庫(昭和51年初版)

星新一を連続して読んでいる。この本は昭和44年に単行本で発表されたものの文庫版である。少年少女が日常からいきなり宇宙へと飛び出し冒険する話。今から50年前の作品だが、古びた印象はなく、唐突だが自然に宇宙話へと展開するあたり見事だと思う。今でも…

星新一「人民は弱し官吏は強し」角川文庫(昭和46年初版)

読み終えて、星新一のお父さんの話だったことを知る。びっくりしたが、納得した。ショートショートを読むつもりもだったので、最初困惑したのだが、すぐに引き込まれて一気に読んだ。大正時代に苦学してアメリカの大学を出て、日本で製薬会社を作った男、星…

東京バレエ団 子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」めぐろパーシモンホール

友人のお嬢さんが出演するというので見に行った。目黒区にある東京バレエ団が毎年行っている夏のイベントらしい。子ども向けとあって客席にはたくさんのお嬢ちゃんとママがいる。始まってすぐに泣きだす子どもがいたりして、お母さんは大変である。平身低頭…

阿刀田高「ギリシア神話を知っていまか」新潮文庫(昭和59年初版)

昔読んだはずだが、何一つ覚えていなかった。面白かったという記憶がある。今回読んでもやはり面白かったし、内容ももう思い出せない。何ということだろう。作者の名前はてっきりペンネームかと思っていたが、本名らしい。珍名字の阿刀田さんのギリシャ神話…

シェークスピア・中野良夫訳「ロミオとジュリエット」新潮文庫(昭和26年初版)

古い文庫本。値段は200円。はじめて買ってもらった文庫本かも。ただ読んでなかった。当時は難しくて読めなかった。有名な戯作だから、舞台や映画では何度も見ている。戯作を読むのはまた違った味わいがあった。訳者が最後に、マキューシオと乳母の人物像の描…

諸井薫「男女の機微」中公文庫(1989年)

バブル期の本をまた読む。諸井薫さんは出版社の編集者だったようだ。名前は小説を書くときのペンネームらしい。今世紀初めにはお亡くなりなっている。30年前のこの本を読むと、いかに時代が変わったかがよくわかる。雑誌の編集者といえば、当時の最先端の職…

藤村由加「人麻呂の暗号」新潮社(1989年)

バブルの頃の本である。万葉集の歌人柿本人麻呂の歌を古代の中国語と韓国語から読み解き、隠された意味を探るという本。多言語を操る人たちが書いていて、前半は面白いと思ったが、後半は疲れてしまった。読み進めても話が深まらないからだ。そのうち解釈の…

水上勉「良寛」中央公論社(昭和59年)

良寛というと、子どもと遊んでいるお坊さんのイメージがあった。禅宗曹洞宗の僧侶だった。良寛さんの字は人気がある。細い線だが、芯のしっかりした字。空白がゆったりとして優しげな印象がある。そのせいで良寛さんは心の優しいお坊さんだと漠然と思ってい…

石川九楊「現代作家100人の字」(平成10年)

20年前の本なので、既に「現代」ではないのだが、そんなことは気にせず、石川九楊の本を初めて読んだ。時々毛筆を書いている人間なので、名前だけは知っていた。石川九楊が百人の有名人の文字を見て、色々書き綴っている。字の書き方、形、配置などからの…

野上彌生子「秀吉と利休」中公文庫(昭和48年初版)

作者が喜寿を過ぎてからの作品らしいが、重く深く緻密な話だった。重厚さに耐えきれず停滞した時もあったが、やっと読み終えた。昨今の文庫本なら上中下の三巻になりそうな分量。昭和37年に発表された作品で、私には言葉が難しかった。為政者秀吉と芸術顧問…

TBSテレビ日曜劇場「TOKYO MER~走る緊急救命室~」

鈴木亮平さんは好感が持てる。お利口で上品で、その上、人柄もよさそうだ。年頃なら親に紹介したいくらい。日曜夜9時のこの枠は、お父さんも一緒に家族が揃って見る枠なんだろう。毎度パパ好みのドラマが多くてつまらない。今回は医療系ドラマ。月9のドラマ…

石川淳「新釈雨月物語・新釈春雨物語」ちくま文庫(1991年)

上田秋成の雨月物語と春雨物語の現代語訳版。やっと読み終えた。つらかった。自分には難しすぎた。解説が三島由紀夫で昭和29年4月とあるから、新釈の現代語訳自体も半世紀前の話なのだから仕方ないか。前半の雨月物語は面白かった。怪奇的な話が好きなせいも…

Eテレ「浦沢直樹の漫勉neo 安彦良和」

ガンダムの安彦良和さんの漫勉。残念ながら安彦さんの漫画は読んだことがないが、ガンダムは今も大好き。NHKの「ガンダム誕生秘話」という番組で、安彦さんに興味を持った。少しひねくれていて、静かに闘志満々なとこが素敵だと思った。ガンダムの映画音楽LP…

石川純一「宗教世界地図」新潮文庫(平成9年)

古い文庫本の帯のコピーが「『いま』がわかる本」とある。1997年の頃の「いま」は、いまから25年前。当時の私は世界がどんな宗教地図を描いていたかも何も知らなかった。呑気な日本人の若者として海外の国々を旅していた。四半世紀前の日本は、今のようなダ…

古畑種基「法医学ノート」中公文庫(昭和50年初版)

法医といえば、ドラマ「アンナチュラル」や「監察医朝顔」が思い出される。この本が出た昭和50年には著者は既にお亡くなりになっている。あとがきを見ると単行本として出版されたのは昭和34年となっているから、今から60年も前の話である。当時、科学的捜査…

新田次郎「武田勝頼(一~三)陽・水・空の巻 講談社文庫(昭和58年初版)

先日、甲府の武田神社と韮崎の新府城跡に行った。武田信玄のことも、勝頼のこともよく知らなかったのに。ただ春の晴れた日に行った武田ゆかりの土地は、新緑の香りに満ちて美しかった。そんなこともあり、古い書棚で眠っていた3巻からなる長編を手に取ってみ…

NHK土曜ドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」

脚本は渡辺あや。意外だったが、だから好きなのかぁと思った。主役は松坂桃李君。今どきの青年がアナウンサーを辞めて大学の広報に入って、論文データ改ざんなどのトラブルに対応する話。風刺一杯のドラマで今の世相を描いている。モノが言えないテレビ報道…

鈴木大拙館

金沢に来るのは3年ぶり。鈴木大拙の本を読んだのはもっと前だ。内容は忘れたが、ここに来たいと思ったことだけは覚えていた。偶然目にした建物の名前に導かれ、雨の日に鈴木大拙館を訪問した。コロナ禍で観光客はいないのではと思ったが、予想に反して盛況。…

藤沢周平「密謀(上)(下)」新潮文庫(昭和60年)

藤沢周平の歴史物は初めてだった。江戸モノにはない緊張感があって、少し戸惑った。時代は秀吉から家康への頃、上杉景勝と直江兼続の話だ。波乱万丈の時代、景勝と兼続はただの主従関係以上の仲で、このふたりのやり取りがこの話の魅力のひとつだった。自分…

福岡 柳川水郷川下り

桜の頃に来れば美しくて何度も来たくなっただろうに。船頭さんは何度もそう言ってくれた。遠い昔に大林宣彦監督の「廃市」という映画を見て、いつか来たいと思っていた。映画の内容はすっかり忘れてしまったけど、尾美としのりと小林聡美が出ていた気がする…

半藤一利編著「昭和史が面白い」文春文庫(1997年)

この本を読むのは2回目。書棚に同じ本が2冊あった。亡父は同じ本を買ってしまったことに気がついていたのだろうか。今となっては闇の中。さて、これは先日お亡くなりなった半藤さんの対談集。最近は記憶がすぐ消えるので2回目でも楽しく拝読。半藤さんの快活…