2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

星新一「悪魔のいる天国」新潮文庫(昭和50年初版)

ショート・ショートの作品集。星新一といえばこれ。題名が示す通り、毒が聞いてて、読み終えるたびに、シャキッとした気持ちになる。このクールな眼差しが魅力なのだが、私はもう少し湿気があるのが好きだ。イラストが内容にピッタリで、どこかすっとぼけた…

「竜とそばかすの姫」(2021年)

細田守監督の新作。今回もまあまあ。彼の映画は、絵、特に色彩が好きだ。今回は幼くして母親を失って、歌が歌えなくなった少女すずが歌い出すというお話。仮想現実のUという世界で、すずはアバターのBELLになる。BELLは歌える。素晴らしい歌声であっという間…

星新一「宇宙の声」角川文庫(昭和51年初版)

星新一を連続して読んでいる。この本は昭和44年に単行本で発表されたものの文庫版である。少年少女が日常からいきなり宇宙へと飛び出し冒険する話。今から50年前の作品だが、古びた印象はなく、唐突だが自然に宇宙話へと展開するあたり見事だと思う。今でも…

星新一「人民は弱し官吏は強し」角川文庫(昭和46年初版)

読み終えて、星新一のお父さんの話だったことを知る。びっくりしたが、納得した。ショートショートを読むつもりもだったので、最初困惑したのだが、すぐに引き込まれて一気に読んだ。大正時代に苦学してアメリカの大学を出て、日本で製薬会社を作った男、星…

東京バレエ団 子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」めぐろパーシモンホール

友人のお嬢さんが出演するというので見に行った。目黒区にある東京バレエ団が毎年行っている夏のイベントらしい。子ども向けとあって客席にはたくさんのお嬢ちゃんとママがいる。始まってすぐに泣きだす子どもがいたりして、お母さんは大変である。平身低頭…

阿刀田高「ギリシア神話を知っていまか」新潮文庫(昭和59年初版)

昔読んだはずだが、何一つ覚えていなかった。面白かったという記憶がある。今回読んでもやはり面白かったし、内容ももう思い出せない。何ということだろう。作者の名前はてっきりペンネームかと思っていたが、本名らしい。珍名字の阿刀田さんのギリシャ神話…

シェークスピア・中野良夫訳「ロミオとジュリエット」新潮文庫(昭和26年初版)

古い文庫本。値段は200円。はじめて買ってもらった文庫本かも。ただ読んでなかった。当時は難しくて読めなかった。有名な戯作だから、舞台や映画では何度も見ている。戯作を読むのはまた違った味わいがあった。訳者が最後に、マキューシオと乳母の人物像の描…

諸井薫「男女の機微」中公文庫(1989年)

バブル期の本をまた読む。諸井薫さんは出版社の編集者だったようだ。名前は小説を書くときのペンネームらしい。今世紀初めにはお亡くなりなっている。30年前のこの本を読むと、いかに時代が変わったかがよくわかる。雑誌の編集者といえば、当時の最先端の職…

藤村由加「人麻呂の暗号」新潮社(1989年)

バブルの頃の本である。万葉集の歌人柿本人麻呂の歌を古代の中国語と韓国語から読み解き、隠された意味を探るという本。多言語を操る人たちが書いていて、前半は面白いと思ったが、後半は疲れてしまった。読み進めても話が深まらないからだ。そのうち解釈の…

水上勉「良寛」中央公論社(昭和59年)

良寛というと、子どもと遊んでいるお坊さんのイメージがあった。禅宗曹洞宗の僧侶だった。良寛さんの字は人気がある。細い線だが、芯のしっかりした字。空白がゆったりとして優しげな印象がある。そのせいで良寛さんは心の優しいお坊さんだと漠然と思ってい…