「ザ ホエール」(2023アメリカ)

超肥満の中年男性の最後の数日間を描いた作品。主役のブレンダンフレーザーはアカデミー賞主演男優賞を受賞している。超肥満の男性の心模様とタイトルの鯨に惹かれて見に行った。体重270キロのチャーリーは立ち上がると鯨のような巨体で、今は自力では立ち上…

松本清張「ゼロの焦点」新潮文豪(唱和46年初版)

引き込まれたくて松本清張。「ゼロの焦点」も初めて読んだ。期待通り面白くて大満足。昭和の香りで育った身としては松本清張はホームのようなもの。懐かしき時代の風景を思い出しながら読み進め、じんわり郷愁に浸る。昭和の半ば、貧しさから脱却して上を目…

「芳幾 芳年 国芳門下の2大ライバル」三菱一号館美術館

一度は行きたいと思っていた美術館。このテーマの展示ならそれほどでもないかと思ったが、そこそこの人出。作品も小さいし、細密に描かれているので、皆、かぶりつきで見る。実にストレスが溜まる展示だった。それでも展示数が多いので、皆息切れして、後半…

千野帽子編「富士山」角川文庫(平成25年)

「近日処分するのでご自由に」という段ボールの中から拾ってきた本である。「富士山」についていろんな作家が書いた文章を一冊の短編集にしている。太宰治、夏目漱石、永井荷風、赤瀬川原平、丸谷才一など、それぞれの作家の個性が出ていて面白かった。特に…

「三井家のおひなさま」三井記念美術館

三井記念美術館は初めて来た。三井本館の立派な建物の一部が美術館になっている。お雛様の部屋は重厚な洋館で、赤い毛氈の上にどーんと座るお雛様たちはうやうやしく輝いていた。3月3日を過ぎた会場は、嫁入り時期をとうに過ぎた女性たちで賑わっていた。…

テレ朝「星降る夜」

テレ朝には珍しく面白いドラマ。火曜日の夜は忙しい。吉高を見たあと、ドラマ10の「大奥」を見ないといけない。このシーズンはこのふたつがお気に入り。あとは「罠の戦争」と、「100万回」くらいかな。「星降る夜」は、初回ではピンとこなかったのだが、脚…

中国歴史の旅(上・下)陳舜臣 集英社文庫(1997年)

中国語を勉強しているし、好きな陳舜臣さんの本なので読んでみた。1997年の文庫なので、中国の姿は今とはかなり違うが仕方ない。読み始めてすぐ、陳舜臣さんの語り口が心地よくて嬉しくなった。上巻は北京から西域へ、下巻は上海から桂林へ。各地の名所をそ…

「RRR」(2022インド)

面白いと評判の映画をやっと見て来た。寒い日には濃厚で熱いマサラティーならぬインド映画。3時間あるが全然飽きない展開。お話は英国統治下のインド、強靭な2人の男が出会い、友情の狭間で使命を遂行していくというお話。アクション有り、歌有り、踊り有…

松本清張「砂の器」新潮文庫(昭和48年初版)

何度もドラマ化された有名な作品だが、読んでいなかった。昭和の名作を読まずに死んではいけない。最近は、晩年に差しかかってきたのでなるべく先送りはやめている。さてお話は、殺人事件とその犯人を捜す刑事さんのお話。被害者の身元は不明。唯一の証拠は…

「佐伯祐三 自画像としての風景 」東京ステーションギャラリー

有働さんが高校の後輩だからか、音声ガイドしているらしい。東京駅丸の内北口のステーションギャラリーに初めて行ってきた。会場はやや狭いが、なかなか雰囲気のあるギャラリーである。佐伯祐三は昔から好きだった。子どもの頃、根津甚八が佐伯祐三を演じた…

NHKドラマ10「大奥」

何年か前に民放でやった同名のドラマも面白かった記憶かある。原作が良く出来ているのだろう。そんなドラマを今回はNHKがリメイク。脚本は森下佳子。そりゃ面白いだろう。時代劇はNHKにアドバンテージがあるのは当然だし。さて、お話は赤面疱瘡という疫病が…

フジTV「罠の戦争」

友達のすすめで見てみた。以前の草彅君の戦争シリーズはエグ過ぎて断念したことがある。今回もおっかなびっくりしながら見てみた。お話は優秀な政治家秘書が息子の事故をきっかけに復讐する話らしい。草彅君の顔演技が見事で思わず見入ってしまった。憎まれ…

高野秀行「語学の天才まで一億光年」集英社インターナショナル(2022)

前々から気になっていたので、お正月のお年玉として購入。思っていた以上に共感できてあっと言う間に読んでしまった。自分も語学習得が好きなので、作者が落ち込んだ時に新しい語学を始めてしまうくだりには強く共感した。そうなのだ。語学学習には何かから…

「星野道夫 悠久の時を旅する」東京都写真美術館

星野道夫さんの写真展を東京都写真美術館に見に行った。会期終了が近いからか館内は老若男女がひしめいて大変混んでいた。亡くなってだいぶ経つのに、今も人気は衰え知らず。何がそんなに人々を引き付けるのだろう。「旅をする木」を読んだのは、1996年頃だ…

「ケイコ 目を澄ませて」(2022)

岸井ゆきの主演。耳の聞こえないボクサーの話。体重を増やしてトレーニングをして、ほとんどセリフのない役を演じる岸井ゆきの。この役、菜々緒にオファーあっても、彼女はやらないだろうなと思った。それほど、この映画に出る女優さんには覚悟もいる。だが…

川上弘美「真鶴」文藝春秋(2006年)

単行本を買うことは滅多にないので、この本を買った時の記憶はしっかりとある。ただ内容は買った記憶ほど鮮明ではない。川上弘美らしい、ちょっと地面から浮いているような話だったという記憶があった。主人公は、夫が何年か前に失踪し、娘とおばあちゃんと…

NHK朝ドラ「舞いあがれ」

途中、脚本家が変わってがっかりしたが、元の桑原亮子さんに戻ったら、すっかり落ち着いた。しかし、話は新年始まって、お父さんの高橋克典が亡くなって深刻。奥さん役の永作博美の泣き笑いの名演が素晴らしくて、何回見ても涙が出た。このドラマはある意味…

アガサ・クリスティ 加島祥造訳「物言わぬ証人」ハヤカワミステリ文庫(昭和52年)

冬はミステリー。どこにも出かけず暖かい部屋で、あまり難解ではないアガサ・クリスティを読む。アガサ・クリスティは昔から好きで、この本も中学生のときに買ったものだ。あれから驚くほどの時間が過ぎた。そして、この年末年始もゆっくりミステリーと思っ…

フジTV「Silent」

話題のドラマも最終回。川口春奈の大きな目からポロポロ涙がこぼれる予告を見て、目黒蓮の手話の切ない演技も、あと1回かと思うと名残惜しい。聖地巡りをしたくなる気分もわかる気がする。コーダという映画でもあったが、手話は音声言語の代わりではなく、…

ヘミングウェイ・高村勝治「キリマンジャロの雪」他十二編 旺文社文庫(昭和41年初版)

ヘミングウェイは以前にも読んでいる。今回は古い旺文社文庫で「キリマンジャロの雪」を読んだ。当時130円の旺文社文庫には巻末に年表があり、解説もしっかりあり、まさに至れり尽くせり。「誰がために鐘は鳴る」がヘミングウェイ原作であることも今回初めて…

平野雅章「食物ことわざ事典」文春文庫(1978年)

古い本だが、勉強になった。食べ物に関する諺をあげて、見開き2ページに文章が並ぶ。食べもの関係だからと、ソフトな読み口を期待していたが、物言いはクールで気難しい先生の話を聞いているかのようだった。甘ちゃんな私の日常には、背筋が伸びるような厳し…

フジTV「エルピス」

長澤まさみが抑えた演技で落ち目な女子アナを演じている。エルピスとはギリシャ神話のノアの箱舟に残されていた希望もしくは災厄の意味らしい。よく分からないのが「テセウスの船」みたいでおしゃれ。眞栄田ゴードンは恵まれた家で育ったの甘ちゃんディレク…

佐藤優 聞き手・斎藤勉「国家の自縛」産経新聞社(2005年)

佐藤優さんの最初の本が面白かったので、これも読んでみた。産経新聞社から出ているので、前回のとは少し味わいが違う。プーチンが最初に大統領なった頃の本なので、今の情勢と合わせてみると興味深い。佐藤優さんは、外交官は国のために命をかけて働くのが…

塚本和也(写真・文)「遥かなりC56  ポニーの詩情と宿命の行路」JTBキャンブックス(平成13年)

頂きモノの本。SLの写真集かと思いきや、高原列車C56の誕生から廃車に至る詳細な記録だった。昭和10年にできたC56は小さい体だが馬力があるので、標高が高い小海線を走った。高原列車のポニーという愛称でも知られ、多くの人に愛された機関車だった。やがて…

日本TV「ファーストペンギン」

奈緒主演のドラマ。堤真一や吹越満も出ている。初回はあんまり面白くなかったのだが、後半、奈緒がぶちぎれた場面の、そのぶちぎれ具合があんまり良いので、2回目も見た。奈緒は以前から気になっていたし。脇役の伊藤かずえが大きくなっていたり、梅沢富美…

東京バレエ団 マカロワ版「ラ・バヤデール」東京文化会館

14日の公演は団体の学生さんが下の階で、一般客は3階から、私は正面からだった。ラ・バヤデールはインドのお話らしく。エキゾチックな衣装でとても素敵だった。ストーリーは愛憎泥沼劇で早い展開で飽きさせないが、やや複雑なので事前に理解しておく方がい…

NHKスペシャル「人体」取材班/坂元志歩「人体VSウイルス 驚異の免疫ネットワーク」医学書院(2022)

知り合いの本を読んだ。3年もコロナに翻弄されている私たちだが、私のコロナウイルスについての知識はぼんやりとしていた。ワクチンも言われるまま3回受けたが、ワクチンのメカニズムも実はよく知らなかった。しかしこの本のおかげで、やっと何が起こって…

フリーマントル 新庄哲夫訳「KGB」新潮選書(昭和58年)

古い書棚から持ってきたロシア系の本。プーチン大統領でお馴染みのKGBのお話である。私のKGB知識はスパイ映画くらいなもので、何も知らない。この本は、スパイ小説で人気の作家が書いた本当のお話らしく、身の毛もよだつ話が満載だった。今から40年前の本で…

中村紘子「チャイコフスキーコンクール ピアニストが聴く現代」新潮社(1988年)

本が出た頃に読んだ記憶がある。30年の月日を経て再読。今読んでも面白い。年月を越えても変わらぬ面白さ、素晴らしさ、当時の私は知る由もなかった。我が家の古い書棚にある数少ないロシア系の本として手に取ったのだが、ロシアという国を知るという点でも…

「李兎煥 Lee Ufan」国立新美術館

前から見たかったのだが、なぜ見たかったのかは思い出せない。最近忘却力がすごい。雨の国立新美術館は二科展のせいか、予想以上に騒騒しい。喧噪から一転して会場は静かな世界。リ・ウーファンは現代アートの人で韓国出身だが、日本での創作も長く、今では…