2月文楽公演「新版歌祭文/傾城反魂香」国立劇場小劇場

このトシになって初めて人形浄瑠璃を見た。お昼の第二部を鑑賞。予想以上に驚きがあった。まず人形が意外に大きい。頭は小さくて10頭身。三人の男性が操作する。主な使い手だけが顔出しだが、あとは黒子である。見慣れてくると顔出しの人さえ気にならなくなる。不思議だなぁ。次に語る義太夫と三味線が舞台右手の回転扉から登場すること。途中で入れ替わるのだが、回転扉のスピードがわりと早い。忍者的。義太夫の渋い声と、生の三味線の響き。重なり合うとドキッとするほど色っぽい。そこに人形の巧みな動きが絡まる。無機質な表情の人形に血が通う。舞台の左右袖に字幕が出るので助かる。世話物の切ない話も、生身の人間でなく人形だからそ響くのかもしれない。無機質な表情に観る人それぞれの思いが重なる。前に人形浄瑠璃の予算削減をしようとした大阪の橋下知事の顔が浮かんだ。もったいない。自分が古くなったせいか、古典的なモノに愛着を持つようになった。もういつ死んでもおかしくない。限られた時間に、人形浄瑠璃はもう一度見られるかなあ。いつも明日が来るとは限らない。さよならの準備は、よりよく生きるための秘訣かも。早くコロナがおさまりますように。