本がベストセラーで世界中で翻訳されているらしい。古い本ばかり読んでいるので知らなかった。82年生まれの既婚女性が主人公。子育てを機に仕事をやめて専業主婦をしている。社会から切り離されて心を病んでいく女性を描いている。こういうと、メンタル弱めなキャリア女子の狭い話のようだが、映画はもっと深く多面的に彼女を取り巻く世界を描いている。主人公は「生きづらさ」を抱えているのだが、彼女だけが格段弱いわけでも、特別、上昇思考が強いわけでもない。ただ今ある世界で一生懸命生きているだけ。誰もが感じている窮屈な感じを静かに切なく描かれている。韓国映画は日本映画にはない重層感を感じることが多い。私が外国人だからかもしれない。韓国の方がエンターテイメント業界が厚いのかもしれない。役者さんの演技が本当にうまい。主人公の同僚や家族、実家の家族など脇役陣の抑えた演技が作品を厚くしている。それにしても私たちを取り巻く世界は便利になったし豊かにもなった。同時に息苦しさは深まった気がする。お隣の韓国も出生率は低そうだし、学歴社会、就職難もキツそうだ。昔ほど友好ムードはないが、いづこも同じ秋の夕暮れ。全部は受け入れられなくても共感できる部分は大切にしたい。コロナのおかげで世間は内向き。嫌な感じだけど。また外に出かけられるようになったら韓国にも行きたい。過去の旅で出会った韓国の人たちはいつも親切で優しかった。旅の思い出を反芻しながら、今は静かにしてコロナ様の怒りを鎮めたいと思う。