星新一「宇宙のあいさつ」ハヤカワ文庫(昭和48年初版)

この本もショートショート。これが一番気に入った。やっと星新一に慣れたのかもしれない。慣れる前に諦めなくて良かった。多少の我慢が悦楽への道。大きく飛ぶ前は低くしずむだ。世の中の事象は見方を変えれば、悲劇は喜劇で、その逆もあり。とかく自分の不幸にばかり目がゆくが、宇宙からみたら、塵のひとつにもなれない我が身。存在価値などそもそも塵にあるのだろうか。気が滅入る夜に読めば、自暴自棄を突き抜けた破茶滅茶な世界に至る。世界が私を拒絶するのではなく、拒絶に私が愛されただけなのだ。死ねば苦しみも終わると勘違いするが、そうではない。延々に砂時計を表示したままスタックするパソコンのように、苦しんだまま永遠に漂うような気がする。ちゃんと終わりまでいかねば。すっかり涼しくなった季節のせいか、秋は物思いに浸りやすい。在宅生活のおかげで読書が進む。たまには、普段読まない本を読んで、新しい世界を見てみることもそう悪くない。なんだかすべてが違う物にみえるかもしれない。