阿刀田高「殺し文句の研究」新潮文庫(平成17年)

阿刀田高さんのエッセイ集。比較的若い頃の作品が詰まっている。作品目録が巻末についている。売れっ子作家の阿刀田高さんは国会図書館勤務経験者。サラリーマン生活を経験しているせいか、読み手のすぐ近くにいる普通の人だという印象がある。重くならず、軽くならず、その絶妙さが職人技なのだが、読んでいる凡人にはよくわからず、ただ心地よい。殺し文句を言ったことも、言われたこともないが、きっと短いフレーズや、ふとした瞬間に、人は愛情を感じたりするものなんだろう。この人だと決めたら、周囲が何を言ってもどうしようもない。外野が騒げば騒ぐほど閉じてしまう。こうして始まった関係も、だたふとした瞬間に魔法はとけてしまう。永遠に続くかと思った日が嘘のように。これまたほんの一言で見える景色が色褪せるのだから、不思議なものだ。しかしたまには色褪せない関係もあるのだろう。はたまた色褪せなど気にしなくなるのかもしれない。親ならまだしも、他人は祝福しかない。おめでとうございます。末永くお幸せに。