小林秀雄「本居宣長(上)(下)」新潮文庫(平成4年)

上下巻2冊をやっと読み終えた。小林秀雄なんて無理だと思っていたが、一生読まないで終えるのも悲しいので、最後のチャンスと手に取った。引用がとても多くて、読み進めるのに難儀した。だが、少しずつ読めば何とか最後にはゴールに辿り着けるものだ。マラソンもきっとこんな感じかもしれない。本居宣長は昔から近くに生家があるせいで知っていたが、こんなに凄い人だとは思っていなかった。「もののあはれ」という言葉だけ、それしか知らなかった。賀茂真淵、契沖、荻生徂徠。歴史の教科書でサラッと触れただけの人々が宣長と共に目の前に現れ、肉声を発する。面白かった。大河ドラマにして欲しいが、アクションが少ないから無理だなあ。でもそれくらいドラマチックだった。書き言葉がなかった時代が貧しい不便なわけではない。宣長はそれがよく分かっていた。過去は未熟なわけではない。スマホもパソコンもなかった私の子ども時代も決して不便でも貧しくもなかったし。辛い読書だったが満足感は残った。無理なことに挑まずに生きて来たが、残りの人生は出来るだけ挑戦の日々にしたいと思う。もう失うものは本当にない。あとは死に向かうだけなのだから。