父は太宰治が好きだったのだろうか。亡父の本棚から持ってきた全集の2冊。太宰治初期作品が収められている。読むのは大変だった。言葉は多いし、筋はあるようでないし、展開が早すぎて、処理能力がノロノロな脳みそはすぐ熱くなってダウンする。1冊目は特に奇をてらった実験的なものも多く、2冊目は多少落ち着いていたが、それでもきつかった。太宰の言葉の海で私は溺死した。彼の言語センスはとてつもない。広くて速くて変幻自在。思わず引き込まれて訳がわからなくなる。面倒くさくて子どもっぽくて、嫌なのだが、なんだか憎みきれない。そういえば父も子どものようなところがあって、困った人だった。でも亡くなると何でも良い方に傾いていく。仏になるということはそういうことだ。父が買ったのは、この2冊だけだったようで、結局彼も太宰の初期作品で挫折したのかもしれない。亡き父を思い出すと、生きているうちにもっと優しくしてあげればよかったと思う。その一方、それが上手くできないのが、親子なのだとも思っている。そろそろお盆である。