太宰治「津軽」新潮文庫(昭和26年初版)

太宰治が故郷津軽を旅するお話。軽妙で多弁な文体ですぐに引き込まれた。弱虫で不器用な見栄っ張り太宰治が見え隠れした見事な津軽本になっている。最後に女中タケとの何年かぶりの再会がシビレる。ドラマチックな展開はないあっけない再会が、かえって現実味を感じさせたし、暖かい気持ちも残った。太宰治のような思春期の心をそのまま抱えて生きる人は男性の方が多い気がする。女の人は経験を上書きしていくから、それなりの年齢になれば、みんな大人である。とはいえ、男性も駄目な部分を温存させても許されるのは若いうちだけだろうな。年齢って本当に残酷。それはさておき、いつか津軽五能線にも乗ってみたい。竜飛岬や外ヶ浜に行ける時が来たらまたこの本を読みたい。亡父が太宰治が好きだったおかげで太宰治を読んでいる。生きているうちには本の話などしなかった。もっと優しくしてあげればよかったが、できなかった。父親の子どもじみたところが嫌いだった。家族ってそういうもんだし、だから仕方ないよね。そう言って今はごましている。