朝井リョウ「イン・ザ・メガチャーチ」日本経済新聞社

推し活中なので新作の単行本だけど、購入して読む。面白かった。推し活業界に入って約10ヶ月。ファンダム(世界)の不思議な心地よさと怪しい魔力にはまり疾走してきたが、この本はそれをうまい具合に言語化してくれている。毎日SNS上で繰り広げられる世界がここに再現されていて、自分達だけの世界だと思っていた世界がとても一般的だったことを知る。自分はなぜこんな少年たちを毎日愛でるようになったのか。多くのファンが聞きもしないCDをなぜあんなに買うのか。大して綺麗にとれてもいない写真(トレカ)を嬉しそうにケースに入れて持ち運びのか。疑問が少し解消された気にもなった。私たちは正解のない世界を生きるために、ギガみたいに来世に持ち越せるものは何もない。視野狭窄して今の「生」を使い切らないといけない。うっかり気を抜くと視野が広くなって全ての喜びが消えてしまうのだ。広い視野を持ってうまく生きれば生きるほど、どんどんつまらない世界が広がるなんて、皮肉なものである。自らを使い切り無我夢中になるために私たちは今は必死なのかもしれないし。それはK-popアイドルでも大谷君でも何でもいいのである。高市早苗首相がトランプとハグする時代に私たちは生きている。カオス。どう生きればいいかなんて、もう誰にも分からない。2度とあやまちは繰り返さないと約束したのだが、どこに向かっているのやら全く分からない。視野狭窄の世界は限りなく心地良いが、このままここに耽っていていいものか。もがきながら生きて、もがきながら死んでいくしかないのだが、目の前のカオスの海は広大すぎるように思える。