塚本和也(写真・文)「遥かなりC56  ポニーの詩情と宿命の行路」JTBキャンブックス(平成13年)

頂きモノの本。SLの写真集かと思いきや、高原列車C56の誕生から廃車に至る詳細な記録だった。昭和10年にできたC56は小さい体だが馬力があるので、標高が高い小海線を走った。高原列車のポニーという愛称でも知られ、多くの人に愛された機関車だった。やがて時代は第二次世界大戦へ。コンパクトでパワーのあるC56は海を渡り、タイとミャンマーを走る泰緬鉄道になった。前線に軍事物資を運ぶ鉄道で、鉄道建設は困難を極めたようだ。大きな岩山を切り通し、深い谷を渡る線路作りは今の写真で見てもゾッとするほど。上からの命令は絶対で、命じられた部隊の隊長は、条約破りも承知上で、捕虜を強制労働させたのだろう。戦後、隊長は戦争犯罪人として裁かれた。悲しい歴史を背負ったC56。作者が廃車の機関車を探しにタイまで渡る気持ちも分かる気がする。時代は繰り返すというが、私達はまた戦争の時代に入ったのだろうか。自分たちの行いが結局は自分たち自身を苦しめることになるのに。機関車は今は静岡県大井川鉄道で見られるようだ。円安で当分海外には出られそうにないので近いうちに見にいきたいな。