読書
太宰治が故郷津軽を旅するお話。軽妙で多弁な文体ですぐに引き込まれた。弱虫で不器用な見栄っ張り太宰治が見え隠れした見事な津軽本になっている。最後に女中タケとの何年かぶりの再会がシビレる。ドラマチックな展開はないあっけない再会が、かえって現実…
読むなら今だと思い全10巻に手をつける。最初の2巻読了。葵の上が亡くなり、藤壺が尼になり、紫の上は初体験、朧月夜との密会がばれるところまで読んだ。盛り沢山で面白いところだし、こりゃ帝も夢中になるわと、大河ドラマの一条天皇を思い出す。恋愛系の…
作家遠藤周作はクリスチャンで有名だ。この本は、戦時中、九州の大学の医学部で行われた捕虜人体実験事件をもとにした小説。重苦しい話だが、引き込まれて読んでしまった。戦後80年近くたった今では想像できないが、戦後10年や20年程度だと、戦争を体験した…
この本は青森の斜陽館に行った時に買った本のようで、裏表紙に斜陽館のスタンプが押してある。太宰治の代表作のひとつだが、初めて読んだ。太宰の初期作品から比べると大変読みやすく、沈んでいく太陽光が斜めに差し込む様子に、没落していく貴族の一家を重…
大河ドラマ「光る君へ」にあやかって読む。この本は、円地文子さんが源氏物語の口語訳をしているときに書いていたものである。軽いエッセイかと思ったら骨太のガチ分析で大変面白かった。今まで気にとめたことのなかった桐壺の更衣の考察が最初に出てきた。…
学生時代の友人に教えてもらった本。時代設定が平成の初め頃、自分のことも思い出しながら懐かしく読んだ。ある高校に迷い込んだ犬を学校で飼うことになり、その犬を交えた話が時代の変遷と共に描かれている。ほどよい緩さと切なさで語られていて心地よい。…
友人の著書。発売当時に購入したのだが、難しすぎて放置してあった。ここ最近の読者習慣のおかげで今なら読めるのではないかと思い頑張った。あらためてこんな難しい本を書いた友人を尊敬した。多少なりとも内容が理解出来たことも嬉しかった。自分が生まれ…
井筒俊彦さんと言えば、三十を越える語学を操る知の巨人。恐る恐る本を手に取ったが、予想以上に分かりやすくて感動した。本書は2部構成で、第1部が「ムハンマド伝」、第2部が「イスラームとは何か」だった。第1部は昭和27年初版、青年の著者が書いたもの。…
今更、人類進化の話を読んだ。東アフリカではお馴染みのリチャードリーキーも、私は名前しか知らなかったからだ。写真がたくさん入っている文庫で、訳がいいのか、面白くてページがぐいぐい進んだ。楽しみながら、人類進化の勉強が出来て得した気分になった…
著者浅川智恵子さんは中学の時の事故で視力を失った。その人がやがてIBMのフェローとなる話だが、個人的な苦労話はあまり語られていなかった。テクノロジーが世界を変えること、あらゆる人に開かれたアクセシビリティが大切なのだと。スマホが使えるようにな…
発売当初の頃に読んだ本の再読。この本で思い出せるのは、何とも言えない読後感があったこと。再読して、あーこれこれ、この微妙な読み心地と、再度懐かしく味わった。アラン・ドロン主演の「太陽がいっぱい」という映画の原作が、パトリシア・ハイスミスだ…
山と溪谷社がこんな新書を出しているんだとまず驚いた。著者は山登りのガイドさん。この方と一緒に山に行きたいなあと思った。山にまつわる神様のお話はそれぞれ面白いのだが、読み終えるのは難儀した。きっと山登りの時に聞いていたなら、さぞかし心に響い…
岩波文庫の『富嶽三十六景』のあとに読んだせいだと思う。少しがっかりした。読者への心くばりが足らないと感じた。ページ表記はなぜあの位置なのだろうか。中央にあって見づらい。でも1番の問題は英訳。日本語の説明の逐語訳になっていて、無闇に長くて、…
非常に読みやすい良書。文庫サイズなので、図版は両開き、そのあとに解説。適量でわかりやすい。北斎の富嶽三十六景を全部眺めてみると、北斎の好みや当時の江戸の風俗が塊となって感じられた。富士山の三角形を、桶の円形からのぞいたり、マルや三角と富士…
岡田節人先生のことは全然知らなかった。生物系の軽めのお話なら簡単に読めそうだと新幹線のお供に持ってきたのだが、浅はかさだった。もう20年前の本だしと、たかをくくっていた自分が恥ずかしい。「知る」とは「知らない」ことを知ることだ。岡田節人先生…
ゆる民俗学ラジオの黒川君の話をきいて、柳田国男を読むことにした。日焼けした古い文庫本。読み終えたら古紙回収に行く本である。最後の読者になれて光栄だ。この本の精霊も喜んでくれるかも。そんな他愛のない妄想から、昔話は生まれたのかもしれない。そ…
知っている人が本を出すなんてことはあまりないので、嬉しくて予約して買った。彼の華麗なる転身にも驚いたし。この本にも感動した。私の知らない彼がいたし、それがなんだかカッコよかった。内容は彼がハンターになるに至る話。語りは、簡潔で、優しくスト…
テレビで保阪さんの「最後の講義」を見た。渋い顔で淡々と語る姿と、内容の濃密さに感動したので本を読んでみた。終戦前後の話だ。泥沼の戦いへと導いた人たちへの憤りがこれでもかと綴られていた。読んでいるうちに、怒りが、現政府への不満と重なって私も…
先日滋賀県に遊びに行ったので、読んでみた。思ったより難解だったが、実際に目にした風景を思い出しながら読み進めるのは楽しい。近江は、遠江と対になる言葉だったのか、言われてみればだが、考えもしなかった。この本は近江の国を舞台にした古代から現代…
大江健三郎さんが亡くなった。ノーベル文学賞をとった作家だから、一冊くらい読んでみようと手に取った。久しぶりに5ページ読んで死ぬかと思った。日課で続けている読書のせいで多少難解でも読めるようになった。しかし異次元の難解さ。それでも我慢して読…
引き込まれたくて松本清張。「ゼロの焦点」も初めて読んだ。期待通り面白くて大満足。昭和の香りで育った身としては松本清張はホームのようなもの。懐かしき時代の風景を思い出しながら読み進め、じんわり郷愁に浸る。昭和の半ば、貧しさから脱却して上を目…
「近日処分するのでご自由に」という段ボールの中から拾ってきた本である。「富士山」についていろんな作家が書いた文章を一冊の短編集にしている。太宰治、夏目漱石、永井荷風、赤瀬川原平、丸谷才一など、それぞれの作家の個性が出ていて面白かった。特に…
中国語を勉強しているし、好きな陳舜臣さんの本なので読んでみた。1997年の文庫なので、中国の姿は今とはかなり違うが仕方ない。読み始めてすぐ、陳舜臣さんの語り口が心地よくて嬉しくなった。上巻は北京から西域へ、下巻は上海から桂林へ。各地の名所をそ…
何度もドラマ化された有名な作品だが、読んでいなかった。昭和の名作を読まずに死んではいけない。最近は、晩年に差しかかってきたのでなるべく先送りはやめている。さてお話は、殺人事件とその犯人を捜す刑事さんのお話。被害者の身元は不明。唯一の証拠は…
前々から気になっていたので、お正月のお年玉として購入。思っていた以上に共感できてあっと言う間に読んでしまった。自分も語学習得が好きなので、作者が落ち込んだ時に新しい語学を始めてしまうくだりには強く共感した。そうなのだ。語学学習には何かから…
ヘミングウェイは以前にも読んでいる。今回は古い旺文社文庫で「キリマンジャロの雪」を読んだ。当時130円の旺文社文庫には巻末に年表があり、解説もしっかりあり、まさに至れり尽くせり。「誰がために鐘は鳴る」がヘミングウェイ原作であることも今回初めて…
古い本だが、勉強になった。食べ物に関する諺をあげて、見開き2ページに文章が並ぶ。食べもの関係だからと、ソフトな読み口を期待していたが、物言いはクールで気難しい先生の話を聞いているかのようだった。甘ちゃんな私の日常には、背筋が伸びるような厳し…
佐藤優さんの最初の本が面白かったので、これも読んでみた。産経新聞社から出ているので、前回のとは少し味わいが違う。プーチンが最初に大統領なった頃の本なので、今の情勢と合わせてみると興味深い。佐藤優さんは、外交官は国のために命をかけて働くのが…
頂きモノの本。SLの写真集かと思いきや、高原列車C56の誕生から廃車に至る詳細な記録だった。昭和10年にできたC56は小さい体だが馬力があるので、標高が高い小海線を走った。高原列車のポニーという愛称でも知られ、多くの人に愛された機関車だった。やがて…
古い書棚から持ってきたロシア系の本。プーチン大統領でお馴染みのKGBのお話である。私のKGB知識はスパイ映画くらいなもので、何も知らない。この本は、スパイ小説で人気の作家が書いた本当のお話らしく、身の毛もよだつ話が満載だった。今から40年前の本で…