フジTV 「監察医 朝顔」

なかなか評判がいい。たしかに朝ドラみたいな月9だ。昭和の家に暮らす父と娘。そして
娘の旦那さんと子どもが加わる。東北の震災で母親石田ひかりを失って以来、東北に行け
ない監察医の朝顔。今も東北に通い妻を探す父が時任三郎朝顔上野樹里はいいなあ。大河ドラマ「江」はきつかったが。上野樹里が夜、布団の中で泣くシーン。川の字になって娘をはさんで、旦那さんの風間俊介が抱きしめるとこ。じーん。大げさに悲しみを出さないのがいい。寂しい、やるせない、苦しい。息をするたび身体の中をすきま風が通るような空しさ。感情を出さない。いや出せないのか。そのあたりがしっとり描かれている。監察医モノが多いが、これは当たりかな。上野樹里時任三郎の親子に風間俊介で、テレ朝ならシリーズ化しそう。でもそうなったら、もう見ないな。

テレビ朝日 土曜ナイトドラマ「べしゃり暮らし」

劇団ひとり演出、原作はヤングジャンプの漫画。お笑い芸人さんたちの熱いドラマ。主
人公の上妻君に間宮祥太朗君。彼がこんな役ができる俳優さんだとは意外。「半分青い」
も意外だったけど。ちょっと見直した。デジタル金魚の金本と藤川は、駿河太郎と尾上寛之。相方を突然失うというドラマチックな展開。なかなか毎回熱く泣かせてくれる。波岡一喜も出てて、「火花」とややかぶる。出演者の多くが関西出身で関西弁がよどみない。小芝風花ちゃんも大阪堺の出身なのか。関西のお笑い系の美人って感じがいい。それにしても男の子たちは本当におバカさんでかわいい。男はおバカさんがいい。勉強できても出来なくても男の子に大事なのはかわいげだね。残念ながら女の子は最初は愚かでもそのうちちゃんとお利口になってしまう。その点、男の子はお利口になるとかわいげを失いやすい。「ほんまこの人あほやわ~」。そう言い出したら愛は深い。

NHKドラマ10「これは経費で落ちません!」

多部未華子が好きなので困る。「凪のお暇」も見ないといけない。仕方なく録画して多部ちゃんをみているが、こちらも負けず劣らず面白い。多部ちゃんは実は美しい。目元ギリギリのまっすぐ揃った前髪がここまでいい感じなのは多部ちゃんをおいて他にはいない。黒木華のアフロヘアなんて大したことない。多部ちゃんは経理という堅くて地味な部署で真面目に生きる経理の人。一枚の請求書から不正や隠された真実を見出す。うさぎを追うな。でも追っていく多部ちゃん。同時に展開されていくラブロマンスもかわいい。不器用で真面目で頭のいい人、これが日本人のデフォルトなのである。そしてここで描かれる世界は日本中のどこにでもある会社の風景。こちらもデフォルト。パソコンや通信機器など導入されてもハンコと紙は変わらない。我が国ニッポンは、国際競争力はレンポウ、いや蓮舫さんのいう通り、本当に1番じゃなくなった。私たちはもはや一流の国ではない。だからといって悲観することはない。これからも真面目に不器用にお利口にただ生きていく。ゲームは続くよ、ドコマデモ♪。それぞれが最後までただ生きるだけ。

TBS「凪のお暇」

話題作。今クールで一番力が入ったドラマ。黒木華が周囲の空気を読み過ぎるのに疲れて、人生リセットする女子、凪を演じる。その恋人が高橋一生。凪に寄り添うゆるふわ男子に中村倫也。豪華なキャスティング。黒木華は上手だし、アフロヘア―もかわいい。中村倫也はエロと無垢のごちゃまぜ感が絶妙。高橋一生は、香川照之みたい。号泣したり、ウソをついたり、強気になったり、優しくなったり、変幻自在で忙しい。旬の役者さんが勢揃いして、今の息苦しさと小さな希望を描く。コミュニケーションの下手な人ほど、他人に興味がない、か。なるほどなあ。見えない空気に合わせて、安全地帯で周囲を観察。傷つかないけど、誰とも近づけない。安全に孤独。いつから私たちはこんなふうに臆病になったんだろう。お暇気分で立ち止まってみる。荷物を下ろすと、新しい扉が開くかもね。

田辺聖子「お聖どん・アドベンチャー」 集英社文庫 (昭和55年初版) 

田辺聖子の存在は知っていたのに読んだことがなかった。関西弁っぽい言葉を話す人間には若い時分には読む気がしなかった。だが、東京の言葉に日々さらされて久しくなると、関西弁の田辺聖子が読みたくなった。昭和55年、今から約40年前に書かれたこの作品は、今の日本の状況と皮肉にもぴったり合う。言論統制で小説家が自由に物語が書けなくなった時代。失業した小松左京筒井康隆と三人で、慣れぬ仕事を次々とやって放浪する話だ。奇想天外な話だが、田辺聖子のゆるゆるな語り口にのせらせていく。語り口調の柔らかさとは対照的に冷静な観察眼と洒落がきいている。易しく、楽しく、深く軽妙だが、描かれている世界は笑えない。平和に暮らせている日常は足元では浸食が進み、いつ崩壊してもおかしくないのかもしれない。40年前のゆるゆるな小説の中に、こんなに怖い兆しがあるとは思っても見なかった。

天気の子(2019)

新海誠の最新作。前半はつまらないと思った。そもそもこの絵があんまり好きじゃない。ただ終わってみたら、感動してた。不思議だ。今回の映画は舞台が東京。東京に馴染みのない人にも面白いのかなあ。あ、これ、あそこの景色だという発見が楽しかったのだ。そして東京が壊れていくのがいい。東京は駄目だ。一度ちゃんと壊れないといけない。だから沈みゆく東京に少し未来を感じた。絵のアングルが今回はお天気ということもあり、人工衛星からの視点?空飛ぶ視線。宇宙を遊泳する視線。神の目線か、はたまた心の目線かと目まぐしくて良かった。音楽は再びRADWIMPS 。少年少女の無垢で乱暴な魂はこんな感じだという気がした。晴れ女のおかげでこの世は守られていたなんて、究極のファンタジーだが、大人になってもファンタジーは必要。むしろ大人が生きる世界は限りなく色褪せているのだから。連日の猛暑、頻発する洪水、異常気象にさらされる今、私たちはファンタジーの中で暮らす小人なのかもしれないね。終わってみるとエピソードが重なり表面的な事象に深い奥行きが出来ている。奇跡を信じる、幸せの素?みたいな気持ちがしっかり芽生えてたりするのだから、おそるべし新海誠ワールド。祈りの力はホント、バカにできない。

 

日テレ「偽装不倫」

東京タラレバ娘」の東村あきこの原作。今回の主演は杏ちゃん。旅先で出会ったイケメ
ンは宮沢氷魚、ヒオと読むらしい。杏ちゃんのお姉ちゃんが仲間由紀恵。その旦那様が谷
原章介。お姉ちゃんの不倫が本物で、杏ちゃんの方が偽装不倫という話。杏が出るドラマ
はだいたい面白い。杏ちゃんはママになってちょっと老けたが、相変わらず魅力的。さて、本物不倫の仲間由紀恵は若いボクサーに入れ込んでいる。彼女のセリフで、「結婚のように、年収やら、容姿やら、いろいろな条件でもう男を選ばなくいいのよ。純粋に好きだけでいいのよ~」というのに、なるほどと思った。結婚は愛情だけではうまくいかないが、逆に婚外恋愛は、純粋に愛情だけで進めるわけだ。となると、純愛は婚外恋愛にしか存在しない?皮肉な話だね。一方、偽装不倫中の主人公杏ちゃんは面倒くさくて自意識過剰のアラサー女子。偽装もばれて、さてこれからどうなると思うのだが、興味はもっぱら理想の夫の谷原章介だ。こっちの方が面白くなってきて、杏ちゃんの純愛はどうでもよくなってきた。本末転倒だね。それにしても、家族を作りたいと願って結婚する夫はそんなに非難されるもんなんだろうか。私の疑問はそこにある。