難解な映画だと最初から覚悟は決めていたものの、やっぱりよくわからないまま終わった。前半はまだよかった。後半は何が何やら。ただ面白くないわけではない。見終わったら妙な達成感があった。走り切った感。開始早々から始まる疾走は立ち止まることを許してくれない。時々「つまりこういうことなのか?」と思考する瞬間にはもう次の謎が覆いかぶさってくる。家に帰って解説サイトを少し読んだ。なるほどそういう意味だったのかと思った。しかし完全には程遠い。他の人にはうまく説明はできないし。周囲の人に聞いても皆分からないというのだから、私の理解力だけの問題ではなさそう。そもそもそういう映画なのだね。難解なパズルで簡単にわかるようには作られていないのだ。何度か見れば面白さが増す映画なのか。筋立てを理解することによって得られる満足など、最初から考えていないのか。ノーランはもうピークを過ぎたのか。なんだろね。映画開始早々から「音」が大きくて驚いた。いきなり爆音の世界にさらわれて、キエフのオペラ会場でどんぱち。二本の線路の間で通り過ぎる列車の轟音を聞きながら椅子に縛り付けられると、やっとテネットという言葉が出てくる。2時間半ほどの長い映画だが飽きはしない。映像の力。登場する長身の美女は1メートル90センチだとか。顔が小さいはずだ。久しぶりの大作だし。半年ぶりの映画館だし。ガラガラだったのもよかったし。何より異空間へのトリップした感じが心地良かった。少し前に行ったタリンの港も懐かしかったしね。どこにも行けない日常。こんな映画にさえ郷愁を感じてしまうのだから。いやはやコロナとは、げに恐ろしきものなり。