池波正太郎「鬼平犯科帳(一)」文春文庫(1974年)

あの日は新幹線で読む手軽な本を探していた。古い書庫は窓もなく蒸し暑い。汗だくになって見つけたのがこれ。鬼平犯科帳の第一作。これなら完璧。テレビで「鬼平」を演じた中村吉右衛門が脳内シアターに登場。車窓を眺めるのも忘れてお江戸に浸った。池波正太郎鬼平が初めて出版されたのは昭和43年。今となっては遠い昔。お色気あり、グルメあり、アクションあり。娯楽要素満載のこの時代小説は当時も大人気だったのがよくわかる。粋な「鬼平」だけでなく、出てくる盗賊どもも個性豊か。そう言えば、時代劇はもうテレビで見ることはほとんどないなあ。昭和の時代、社会は高度経済成長を遂げ、今思うと日本も若かった。勢いがあった。平成になると、平和だけど前に進まななくなった。ジャパンの名前もかすれて停滞した。そして令和。周りは新たなページに進む中、すっかり乗り遅れ。いまや三流国になった我が国。少年老いやすく?おごれるものは久しからず?あああ。ため息ばかりの日々だが、それでも前を見て進まねばならない。だからこそ鬼平犯科帳でしばしの現実逃避だね。今日も騙しだまし生きている。お疲れ様でした。