陳舜臣「茶の話 茶事遍路」朝日文庫(初版1992年) 

中国ブームが続く。陳舜臣のお茶の話。もともとは朝日新聞に連載されていたものらしい。中国のお茶の歴史かと思ったら、そんな狭い話ではなく広く深いお話。お茶を知った人間はお茶にはまり、いつしか手放せなくなってしまった。お茶を手にいれるために戦い、お茶をくみかわすことで心を通わせ、いつしかお茶は人類の暮らしのとても深い部分に入り込んでしまった。そもそもアメリカがイギリスから独立したのもお茶が原因らしい。お茶の税金に反対した植民地アメリカが本国イギリスと戦いを始めたとか。お茶が欲しいイギリスは中国に見返りにアヘンを持ち込んだとか。モノを知らない人間にとっては、へえーの連続である。今から30年近く前の本を読んで感心しているのだ。もっと若いうちに読んでいれば、その後の人生は多少変わったかもしれないよね。もう何を言っても遅いのだけど。まあ、生きているうちに読めてよかったよ。それにしても、お茶を飲むという行為にこんなに奥深い歴史と哲学が秘められているなんて。茶道もいつかやってみたいと思ってはいたが、もうやる時間はないなあ。夕日は落ちだすとあっという間に落ちていくように。人生も今頃になるとあっという間に落ちだす。焦るなあ。でも焦ったところで行く先はひとつだし。ゆっくり味わって参りましょう。