懐かしい風景の中で人気の俳優さんたちが懐かしい言葉を話していた。不思議な感覚。前々から話を聞いていた映画を見た。公開から1ヶ月、終わってしまう前に見なきゃっと。写真家浅田政志さんの話。家族写真を撮る写真家で、自分の家族から始まって、いろんな人の家族を撮る。家族というものは面倒くさい部分も多いからついついぞんざいに扱ってしまうのだけど、家族の時間は案外儚い。気がつくと消えている。この映画の浅田家は仲が良くて映画はまったりと進む。そこに東北の震災がくる。写真の汚れを落として返却するボランティアに向かって、「まだそこまで来ていない人間もいる」と激昂する人が出てきた。喪失の痛みはそれぞれ違う。乗り越え方も悲しみ方も、隠し方も千差万別。やりきれなさが溢れていたあの時のことを思い出した。記憶が悲しみを深め、記憶が悲しみを癒す。写真は記憶を手伝う大事な道具。なるほどなあ。写真がないともう思い出せないことが一杯。写真は幸せな瞬間を思い出させてくれる。たとえもうその幸せは存在してなくても。確かに存在したことを。