福岡 柳川水郷川下り

桜の頃に来れば美しくて何度も来たくなっただろうに。船頭さんは何度もそう言ってくれた。遠い昔に大林宣彦監督の「廃市」という映画を見て、いつか来たいと思っていた。映画の内容はすっかり忘れてしまったけど、尾美としのり小林聡美が出ていた気がする。掘割を進む船の映像がなんとも退廃的で、小林聡美がしっとりと色っぽっかったのが心に残っている。今の柳川はコロナもあり、観光客はほとんどいなかった。たったふたりの客を乗せた船とすれ違う船もない。アンパンマン顔の船頭さんは、いい声で1時間の船旅を楽しく盛り上げてくれた。関ヶ原の戦いのご褒美に貰った筑紫の土地に、柳川城の周囲に巡らしたお堀は、12年かけて作ったとか。400年前のお堀をお船でゆらゆら下る。景色は古びた風情を残すところもあるが、衰退した地方の町っぽいところもある。時間が止まったような景色に、しばしぼんやりと漂った。終点の御花では無人のお庭を見て帰る。こんなに閑散としていては、観光業の人たちにしてみれば大変だが、人ごみを避けたい方にしてみれば最高たった。大林さんも逝ってしまった。新しい時代がきたね。一方では、古い人たちが的外れなことをして自ら退いていく。世代交代。疫病に見舞われて暮れゆく国ニッポンの今の姿は、寂れた柳川の川下りとどこかつながる。また桜の頃に訪れてみたいな、船頭さんの言うとおり美しくてたまらないよね。