伊吹有喜「犬がいた季節」双葉社(2020年)

学生時代の友人に教えてもらった本。時代設定が平成の初め頃、自分のことも思い出しながら懐かしく読んだ。ある高校に迷い込んだ犬を学校で飼うことになり、その犬を交えた話が時代の変遷と共に描かれている。ほどよい緩さと切なさで語られていて心地よい。スピッツの「スカーレット」も出てきて、久しぶりに聞いてしまった。若い頃は、高校時代の恋人と結婚する友人を見て、まだ人生は始まったばかりなのに、一生を共にする人を早々に決めていいのだろうかと思っていた。今は、高校時代の恋人が正解なのかもしれないと思うようになった。樹木希林さんが「分別がつかない頃にしか結婚はてきない」と言ったらしいが、確かに結婚には勢いが必要だし、若い頃に根拠なく好きだったものは年を重ねても変わらず好きでいられることが多い。振り返ると後悔ばかりの人生だが、後悔することがたくさんあってよかったと今は思う。なんでも過ぎ去っていくとキレイになってゆく。ノスタルジックになるのも年をとった証拠。まあそれも悪くない。