TBS「99.9 刑事専門弁護士 seasonⅡ」

冬ドラマの中では視聴率が一番いいらしい。やっぱり面白いからね。前回よりも今回の方が面白いのは登場人物のキャラが安定してきたせいかな。木村文乃も初回は痛かったが、回を重ねるごとにおさまってきた。松潤の無駄な美形やら、ラーメンズの片桐君とも、ぴたーっと合ってきた感じ。でも一番いいのは香川照之。演じているのが楽しくって仕方ないみたい。コミカルな役も大好きなんだろう。歌舞伎では本領発揮出来ないが、普通の芝居は素晴らしい。斑目さんの岸部一徳。裁判官の鶴甁。裁判官の闇。裁判官だって人間だもの。でも腐敗しすぎよね。あ、これはドラマだけじゃなくて現実世界もね。至るところでほころびが見えているのに、どうにも出来ない。ドラマは一発逆転系、「アンナチュラル」みたい。終わったあとに爽快感があっていい、特に日曜夜にはふさわしいかも。月曜からの自分は、たとえ全然逆転出来なくてもね。

希望のかなた Toivon tuolla puolen(2017)

フィンランドアキ・カウリスマキ監督作品。マキ・カウリスマキはお兄さんで、兄弟で映画監督らしい。映画は、シリア難民のカーリドが家族を失い、唯一生き残った妹と生き別れになって、ヘルシンキに辿りついたところから始まる。並行して、アル中気味の奥さんと別れて、人生を変えようとするフィンランド人の中年の男性の話が交互に登場する。難民申請を済ませたカーリドが、トルコに送り返されそうになって逃走するあたりから、ふたつの話が一つになる。映画は面白い。いい映画である。話題の難民問題を描いているが、重くならず、軽くならず、面白く語りかけてくる。「フィンランドは、いい人が一杯いる、いい国」だが、カーリドは難民認定されないし、極右のお兄ちゃんたちはウロウロしている。簡単ではないのだ。でも、偽造IDは作れるし、仕事をくれる人もいる。アル中だった奥さんも立ち直って、今では自分が捨てた結婚指輪をペンダントして人生を建て直そうとしている。一筋縄では解決できないことは一杯だが、絶望だけがあるわけではない。世界は壁をつくり、緊張は高まっているけど、壁を築けば安心というわけではない。情けは人のためならず。壁の向こうとこちら側、いつ立場が逆転するかもしれない。それにしても、主人公が山田孝之に見えて仕方なかった。缶コーヒー飲んでもう一回みようかな。

現代女流書100人展 セントラルミュージアム銀座

このたび結婚を延期された眞子様もご覧になったという書展を見に、異国情緒一杯の銀座に足を運ぶ。毎日書道会主催の書展なので、案内も「大字」「かな」「近代詩」などに分類されている。会場に入ると客もスタッフも、圧倒的に年配の女性が多い。日本の書道会を支えているのが、この層なのだ。そういうニオイが会場に満ちている。書展を見るのは気力が要る。知り合いの作品でも無い限り、ただ漫然と書展を見に行くことはなかなか出来ない。だいたい何がいいのかよく分からない。感じようとしてもだいたいは文字があって何やら訴えてくる。なるべくじっくり見ないようにして、会場をさらーっと眺める。気になる作品には少し近づく。100人もの現代女性が書いた作品だったが、近づけたのは2,3枚。私の勉強不足のせいだが、目指している世界がピンとこなかった。今、「現代女流」というのも、古くさく思えてしまったし。早々に退散して賑やかな銀座の街角に戻ってちょっとホッとした。それにしても、眞子様。この書展をご覧になって、取り沙汰されている諸々を、ひとときでも忘れられたのなら良いのだが。

きゃめる 投げ銭ライブ 新宿ダブリナーズ

久しぶりに知り合いがご贔屓のアイリッシュバンドを聞きに新宿のアイリッシュパブへ行く。「きゃめる」は女の子4人のアイルランド伝統音楽を奏でるグループ。全員が東京芸大卒の才媛。見た目はほわ~んとしているのだが、演奏はキリリと男前。とりあえず「キルケニー」が喉を潤すと演奏が始まった。ホイッスル(笛)の滑らかな旋律がキルケニーと一緒に体の中に流れ込む。ブズーキ(弦)とバウロン(打)が笛に絡まってクルクルル、らせんを描いて走り出す。途中でフィドル(弦)が加わると笑っているような、ちょっと泣いているような微妙な感じになる。軽快なリズムと転調が重なるほどにめまいのような陶酔が襲う。2敗目はギネス。夜が更けていく。きゃめるの演奏が素晴らしいのはいうまでもない。私がなにより素敵だと思うのは彼女たちがとても幸せそうに演奏していること。今、演奏しているこの瞬間、瞬間が好きで好きでたまらない~っていう感じがいい。明日のことも、昨日のことも、頭を悩ますことは多いけれど、我に入り、我に包まれるこのひとときは、すべてを忘れていられる。無敵の時間。

磯田光一「永井荷風」(講談社学術文庫)

古い書棚から引っ張り出してきた色の変わった文庫本。「永井荷風」の評伝だった。荷風の生涯を、荷風の作品と時代、暮らしを丁寧に拾い出し、緻密に分析した一冊。荷風は裕福な家の長男として生まれ不自由なく育ち、若い時分はアメリカとフランスに渡っている。政府高級官僚から実業家になった父と、芸術・文学に傾倒した息子の荷風。十分過ぎる父の恩恵を受けつつ離れていく荷風。アメリカではのめり込んだ女性から逃れ。親の勧める相手と結婚してみたが早々に離婚し。馴染みの芸妓との結婚も長続きはしない。荷風は本当に「個」であり、「孤」を求めた。だからこそ、素人女性にはない「清廉さ」を玄人女性から感じ、なれ合いや束縛を忌み嫌った。ひきかえに孤独も不安も甘受した。貫いた。徹底した「個人主義」が偏屈で性格の悪い荷風を作った。筆者磯田氏は、荷風の幾重にもなる複雑な心理構造や行動を文献から丁寧に紐解く。過度な感情を入れることはない。ただ変人荷風の理解しがたい「純粋さ」を見せてくれた。磯田光一氏は昭和62年に亡くなっている。今から30年以上前だ。遠い昔の文庫本、色が褪せるはずだ。でも、今読んでも、心に新たな光りが当たった気がする。荷風自身が色褪せないのでもあるが、荷風に光をあてた磯田光一の分析にも、時代を越えたメッセージがある気がする。

平成30年大相撲初場所11日目 両国国技館

日本人と生まれたからには一度はお相撲をナマで見たいと思っていた。最近相撲に夢中な友人のおかげで、やっと相撲デビューがかなった。知らなかったが、国技館入口のもぎりの男性も館内で働く人もみんな親方衆だという。人気の振分親方、鳴門親方もいる。力士は引退後は国技館で働けるの?ミステリアス相撲協会。知らないことはまだあった。国技館は朝8時に開場。朝から夕方6時まで国技館で遊べる。地下に行けば300円でちゃんこも食べられる。国技館名物の焼き鳥も美味しい。国技館で焼いているらしく冷えてもイケる。人気力士の名前のついたお弁当もあるし、2階にはソフトクリームやパンケーキもある。午後2時半。国技館横で力士を見る。三役以上は地下の駐車場から会場入りするらしいが、それ以下は、国技館の横道を歩いて入場してくる。そこに張り付いて力士に声をかけるのが、「入り待ち」である。そうこうしているうちに幕内土俵入り。化粧まわしをつけたお相撲さんが土俵をぐるりと囲む。力士の輝くような体つきは美しくて壮観。続いて横綱土俵入り。今回は鶴竜ひとりで寂しい場所だが、さすが横綱、かっちょいい。白鵬稀勢の里を含め、10人も休場している場所だが、幕内の取り組みはそれでも楽しい。今回は結びに全勝の鶴竜玉鷲に負けて大盛り上がり。座布団が飛ぶ飛ぶ。最後は弓取り式。初のお相撲観戦が終わる。国技館は収容人数のせいか、両国駅にも総武線にも混乱はない。夕方6時に終わる大相撲は、老若男女楽しめるエンターテイメント。問題山積の相撲界だが、いついつまでも皆を楽しませて欲しいものである。高齢大国ニッポンの大事な娯楽として。

TBS 「アンナチュラル」

石原さとみは凄いなあ。彼女が出ているドラマはなぜだか見てしまう。華があるというか、演技がうまいというか、役柄にスポッとはまってドラマを引っ張るというか。今回は解剖医。両親が練炭で無理心中し、彼女だけが生き残ったという設定だ。「99.9刑事専門弁護士」の松本潤の設定と似ている。主人公は頭脳明晰な専門職。一見、脳天気に明るいのだが、過去が深刻、時々フッと闇を見せる。石原さとみの演じるミコトの同僚が市川実日子シンゴジラだね。窪田正孝は弱そうだが裏がある。日曜美術館井浦新は、暴力的な変人。上司は孤独のグルメ松重豊。脚本が「逃げ恥」の野木亜紀子。豪華なドラマである。99.9もそうだが、世間の網の目から漏れた者の叫びを拾い上げる救世主的なドラマ。救世主自身も痛みを抱えていて、大上段に構えるわけでも、過剰に微笑むわけでもない。ただただ自分も自分が生きるので精一杯で、あんたのことなんて考えているヒマなんてないんで・・・っていう態度で、埋もれた叫びや忘れ去られた苦しみを掘り起こしていく。今どきはこういう風に善行を行うのが一番スマートなんだろうな。上からでも横からでもなく。へりくだることもなく。