Every Thing Will Be Fine (2015)

ヴィム・ベンダースの映画は「パリテキサス」が好きだった。この映画もベンダース特有の映像と間合いのある作品だ。ある作家が雪道を運転していて飛び出してきたソリの子どもをはねてしまう。急いで車の前に回ると5歳くらいの男の子がいる。ああ、よかった。男の子は無事だったと、子どもの手をひいてソリが出てきた方向にある、丘の上の家まで男の子を送り届ける。出てきた母親は男の話を聞くやいなや、息子に「ニコラスはどこ?」と問いただす。一瞬の間。突然母親は雪道を駆けおりていく。それを追う男。遠くに停車している車。一連をロングの映像で見せる。映画は、取り返しのつかない事故をおこした男の12年を追う話。過失だが、子どもを殺した罪は消えない。子どもを失った母親の悲しみは深い。心の「傷」は決して消えない。痛みを抱えて生きるのだ。自分で自分の傷は癒せない。ただ人の痛みが少しだけ分かるようになる。子どもを失った母親と男の交流が印象的だった。パリテキサスの仕掛け部屋の電話に通じる。静謐で切ない、でもじんわりとくる映画だった。