吉原高志・吉原素子編訳「初版 グリム童話集」白水社(1998年初版)

グリム童話は初版から半世紀ほどかけてグリム兄弟によって何度も書きかえられている。現在の私たちがよく知る物語は第七版をもとにしているらしい。その初版から選りすぐったものを集めた本がこれ。残酷だったり、お行儀が悪いのやらあって、童話らしくなくて面白い。キレイな扉絵やおしゃれな挿絵もあって気分は中世。お馴染みの白雪姫も赤ずきんちゃんもシンデレラもみんなグリムだったのね。ヘンデルとグレーテルは、初版本を読んでいたら、映画「鬼畜」を思い出した。気の弱い旦那さんの緒形拳が、怖い嫁の岩下志麻に言われて子どもを捨てに行く映画。ここでもお父さんが奥さんに言われて子どもを捨てにいく。どの話も善悪がぐちゃぐちゃで未開な感じがする。そもそも善悪はそういうものかもね。子どもの頃、腕時計がディズニーの白雪姫だった。祖父からの贈り物で、いとことお揃いだった。彼女のはシンデレラで、当時はいとこがうらやましかった。だが、今は白雪姫が好きだ。あのうかつな感じが好き。どちらも母に疎まれ、最後は王子様に見つけられて幸せになるのだが。白雪姫、初版では最後に母親が火で熱くなった鉄の靴を履かされて死ぬまで踊らされて終わる。残酷な結末だ。子どもが読んだらどう思うのか影響はわからないが、そもそも子どもは残酷な生き物だ。残酷さは純粋さと背中合わせで存在するのかもしれない。不純な方が攻撃力は弱いってこと。子どもをなめちゃいけない。