よしもとばなな「さきちゃんたちの夜」新文庫 2013年

私の周りにも「さきちゃん」がいるので買って読んだ。この本は「さきちゃん」が主役の短編集。5つの話全部にさきちゃんが出てくる。一番気にいったのは、豆のスープの話。老夫婦とその息子と離婚した奥さんと娘の咲ちゃん。離婚後、娘と一緒に、だんなの両親と暮らすお母さん。祖父と祖母は小さな家で豆スープを毎週作って周囲の人に無料で提供する。やがて祖父と祖母は亡くなり、母は豆スープを離婚した父と一緒に再現する。旦那さんの両親と折り合いの悪いお嫁さんも多い中、その微妙な人間関係を選んで暮らす母。「家族じゃないけど家族な感じ」に、「よしもとばなな」を感じる。是枝監督に通じる今のトレンドかも。どの話も日常のエアポケットみたいな話で、そこだけ別の時間が流れている。誰も傷つけることなく、誰もが冬のひだまりみたい。硬いんだけどほんわか暖かい。素朴でまっすぐな魂。飼い慣らされていない野生動物の美しさみたい。さーっと読めるがじんわり来る。女子的読書生活によしもとばななはぴったりかも。すぐに読み終えたので、この本は私の「さきちゃん」にプレゼントした。