円地文子「源氏物語私見」新潮文庫(1985年初版)

大河ドラマ「光る君へ」にあやかって読む。この本は、円地文子さんが源氏物語の口語訳をしているときに書いていたものである。軽いエッセイかと思ったら骨太のガチ分析で大変面白かった。今まで気にとめたことのなかった桐壺の更衣の考察が最初に出てきた。なるほど桐壺の更衣もただの弱々しい女人ではなかったのかと納得。源氏物語は深く知れば知るほど面白い。「光る君へ」の脚本家大石静さんもこの本を読んでいるのではないかと思った。大河ドラマの脚本を書くのだから当たり前か。宇治十帖の主人公である薫について、優柔不断で魅力にかけるというのも大きく頷いた。匂宮の方がはるかに魅力的だ。関係ないが、ほとんどの日本男性は薫タイプかもしれない。宇治十帖は面白いが、紫式部が書いたのではないというのも賛成だ。ひょっとして男性が書いたものかもしれない。それにしても暑い夜更けに冷房をきかせた部屋でゆっくり本を読むのは幸せだ。幸せは極めた瞬間に崩壊へと落ちていくのだけど。諸行無常源氏物語のテーマ。年をとって読む源氏物語は深い。年をとるといいこともあるね。