「草乃しずか 日本刺繍展」日本橋高島屋SC

頂いたチケットで雨の合間を縫って日本橋までやってきた。老舗日本橋高島屋の催事場は中高年の女性達で賑わっていた。開店早々に来たので空いててよく見られた。素晴らしい刺繍が並ぶ。着物や帯やタペストリーなど、豪華絢爛。大河ドラマにあやかってか、源氏物語の女君達をイメージした着物もあった。そもそも着物の刺繍は裾の方にあるので目線が下になるのは仕方ないが、目の高さで見られたらもっとよかったと思う。年代別の着物は、実家にあった呉服屋さんの冊子と同じで笑った。二十歳の振り袖、結婚式、お宮参り、入学式にはこの装いと、昭和の母の嗜みを示した冊子だ。娘の成長に合わせて着物を誂え買い重ねた母を思い出した。時代が変わり、母への罪悪感も薄れてきた。昭和も平成も終わった。令和の日本だが、ここ日本橋高島屋は時計が止まっていた。エレベーターガールもボーイもいて、人が介するサービスが一杯。梅園の白玉あんみつも変わらず美味しい。裕福な高齢者ならこの近所に住んでお買い物は全部ここで済ませたいな。さて、日本刺繍に限らず、刺繍は一針一針刺して描いていく、気の遠くなるような作業。時間をかけて丁寧に作った物を大事に使い、やがて受け継ぐ。作り手から使い手への時間を越えたメッセージだね。手にして作り手を想像し、なんらかの思いを感じるのは、ロマンチックな営みだ。時間をかけるという贅沢をこれからは存分に堪能していきたい。