太宰治「斜陽」新潮文庫(昭和25年初版)

この本は青森の斜陽館に行った時に買った本のようで、裏表紙に斜陽館のスタンプが押してある。太宰治の代表作のひとつだが、初めて読んだ。太宰の初期作品から比べると大変読みやすく、沈んでいく太陽光が斜めに差し込む様子に、没落していく貴族の一家を重ねる。なんとも趣き深くて、言葉選びのセンスに感じ入る。最後まで貴族のままで亡くなっていく母親を見送る兄と妹。死を選ぶ者、生きる為に貴族を脱しようとする者。どちらも有り。太宰治自身は何度も死のうと試みている。一緒に女性を道連れにして、女性だけが亡くなったこともあったらしい。この作品が生まれた頃は小説家としても認められていたはずだが、死への憧れは生涯尽きることはなかったのだなあと思う。地方の名士の六男坊という微妙な立ち位置もあるのだろう。惜しまれて行きたいと、どこかで思っていたのか。どうであれ、天才であることには間違いない。かえりみて、夭逝する年はとうに過ぎた。傾いていく西日を浴びていく日々、さあ、どうなることやら分からないが、とりあえず今日はなんとか頑張ろう。1日1日重ねていくだけ。それで十分。