タップを習っている友人に誘われて行ったので、タップのステージだと思っていた。だが開けて見れば、タップは幕間だけで、「墓場のゾンビ」がたくさん出てくるお芝居だった。赤坂見附からすぐの地下にある小さな劇場。演者の表情も、観客のためいきも全部筒抜けなコンパクトな空間。若い頃好きだった小劇場の演劇も最近はちょっと敬遠しがち。気恥ずかしい熱い台詞や非現実に引き込むハイテンションが苦手になった。幕間のタップはかっこよかった。あの音が響くにはちょうどいい空間だった。ゾンビの役者さんたちはとても上手だった。娘さんも、愛人もきれいだったし、イヌも、墓守のオジサンも明るくて面白かった。楽しくてわかりやすく、何度も笑った。でも私は途中で寝落ちしてしまった。疲れていたのだ。開始前のビールもいけなかった。ごめんなさい。いくら若作りしても、いい舞台を寝落ちするようじゃあ意味はない。年々感性が鈍っていく自覚がある。老いは着実に私を包み込んでいく。老いという灰色の雪が体全体、頭蓋骨の中に降り積もる感じ。仕方ないことだが、まだ埋もれたくない。執着。ただひとつ言えるのは、演劇をやっている役者さんたちの眩しさは、灰色の老雪とは対極にあるような気がする。ああ、沈みゆく夕日は思った以上にはやいようだ。