宮澤賢治「注文の多い料理店」新潮文庫(1990年初版)

宮澤賢治第2弾。短い童話だったのであっという間に読んでしまった。絵本で読んだことがあったが、最後は覚えていなかった。記憶は曖昧だね。ふたりの猟師が山で迷う。お腹がすいていたので見つけたレストランに入る。靴を脱げや、クリームを塗れなどの注文を受け、最後には自分が料理されることに気づく。昔話や童話のたぐいにはゾッとする怖さがある。子どもはそもそも残酷だ、とういより子どもはそれを隠さない。虫一匹殺さぬ顔をしていても、私たちはたくさんの命を日々食べて暮らしている。残酷な一面も私たちの日常なのだ。まだ2冊だが、宮澤賢治が今も人気があるのはよくわかった。寒さ厳しい岩手の内陸で暮らしていた賢治。あの時代に賢治が見た世界を想像してみる。私たちが今感じている閉塞感と多少通じるものがある気がする。想像の翼を広げて世界を見つめていると、世界はどこまでも広がる。一方、大きな街にいても自分の周りの世界は狭く窮屈なことも多い。あの震災から10年。私たちはどう変わったのだろう。いろいろ考える季節がまた来た。