シェークスピア・中野良夫訳「ロミオとジュリエット」新潮文庫(昭和26年初版)

古い文庫本。値段は200円。はじめて買ってもらった文庫本かも。ただ読んでなかった。当時は難しくて読めなかった。有名な戯作だから、舞台や映画では何度も見ている。戯作を読むのはまた違った味わいがあった。訳者が最後に、マキューシオと乳母の人物像の描き方が天才的に素晴らしいとあった。確かにこの2人の騒がしい存在が話を盛り上げていたし、対照的に、若い男女のひたむきな純愛がきれいに悲劇に繋がったのかもしれない。お芝居は好きだけど、子どもの頃は、本を読むことが苦手でほとんど読めなかった。国語の授業もダメ。教科書も全然興味そそられず、唯一読めたのはシェークスピアの戯作だった。確か5年生の教科書には「リア王」が載っていた。今でも役柄をあてて読み分けしたときの楽しさを覚えている。セリフを読むときの高揚感。シェークスピアのセリフの面白さは、清らか力強くて、甘くて下品で、鋭くて高雅で、とにかくお喋り。どこに向かっていくかわからないジェットコースターに乗っているみたいな面白さがあった。コロナですっかり悪者にされてしまった演劇だけど、演劇の魔力にまたかかりたいと思う。それがかなうまでは、いましばらく、本の世界で妄想するだけだけど。