立花隆「宇宙からの帰還」中央公論社(1983年初版)

この本は立花隆の追悼企画でも紹介されていたので期待して読んだ。期待通り面白くて一気に読んだ。すっかり忘れていたが、その昔、世界は冷戦状態にあり、西側と東側は敵対し睨み合っていた。ソビエトアメリカの宇宙探索への競争はソビエトが当初はかなりリードしていた。アメリカは国の威信をかけてお金をつぎ込み追いかけた。今は宇宙へロケットが上がることもそんなに珍しくなくなった。それでも未だ地球のような生命体がいる星があるとは確認されていない。地球を離れれば、周囲には生命は存在しない。上も下もなく、無限無音の闇は死の世界でもある。そんな風景を眼前に見れば、人生観かわるだろう。変わらないはずがない。そう思って立花隆はインタビューを重ね、まとめたのがこの本だ。感じ方は人それぞれ。宇宙から見たら私達は今も愚かな行いを続けている。宇宙から見ると、当たり前だが地球に国境はない。ただ環境破壊の様子や戦火は見えるというから感慨深い。私は宇宙に旅立つことはもうないが、たぶん死ぬときに同じような気持ちが味わえるのではないかと期待している。生きるということはなかなか貴重な体験なのだね。普段は実感出来ないが。