瀬戸内寂聴「幻花(上&下)」集英社文庫(昭和54年)

瀬戸内晴美の歴史ロマン。仏門に入られてすぐの作品で、今から45年ほど前の作品かな。室町足利義政将軍と、愛妾今参局と御台所日野富子が主な主役。下剋上から応仁の乱に至る話である。お話は現代から始まり、銀閣寺のお月見で見つけた古文書から一気に室町時代へとタイムスリップ。語り部の千草に連れられて混乱の室町の京都へ。面白かったのであっという間に読み終えた。現代から始めなくても良かったのではと思ったが、最後まで読むと、うまく伏線が回収されて、まあこれで良かったかと納得した。第二次世界大戦では戦火を免れた京都だが、応仁の乱ではすっかり焼け野原になっていたのだね。10年にも渡る長い戦乱を経た京都の土地には無数の死人の血が染み込み、骨が埋まっているのだあと思うと感慨ひとしお。京都は花も嵐も乗り越えてきているのだ。今またウクライナで戦争が始まった。私達は過去の経験を踏まえていても、戦いを完全に止めることは出来ないのだろうか。独裁者は必ず生まれ、私達が黙認したおかげでまた無数の命が失われていく。コロナに続いて、また私達は大きな分岐点に来ている。本質を掴むこと、対話すること、歴史を学ぶこと、すへては自分のために。愛するもののために。未来のために。