大江健三郎「万延元年のフットボール」(昭和46年初版)

大江健三郎さんが亡くなった。ノーベル文学賞をとった作家だから、一冊くらい読んでみようと手に取った。久しぶりに5ページ読んで死ぬかと思った。日課で続けている読書のせいで多少難解でも読めるようになった。しかし異次元の難解さ。それでも我慢して読んだ。マラソンの完走ってこんな感じかも。諦めなければいつかは終わる。お話はただ難解なわけではなく、圧倒的な言葉の力がある。言葉の多さとひとつひとつの重量感。それにお話が深くてエグい。濃密な話に心身揺さぶられ、吐気さえ感じた。弱腰の自分を白日に晒せと挑発された。困難を前に逃げようとする自分に、生き直しの決意を表明しようと提案されたような話だった。私の精一杯の理解力では作者の意図には届いていない。遠すぎる。でも挑戦できてよかった。おどろおどろしいことを語っていても、光に向かおうとする意志があり、生命力を感じた。不思議だが、よく分かんないのに感動した。根っから前向きなのが好きなのである。