今谷明「近江から日本史を読み直す」講談社現代新書(2007年)

先日滋賀県に遊びに行ったので、読んでみた。思ったより難解だったが、実際に目にした風景を思い出しながら読み進めるのは楽しい。近江は、遠江と対になる言葉だったのか、言われてみればだが、考えもしなかった。この本は近江の国を舞台にした古代から現代に至る歴史を語っている。昔の学者さんが書いた本らしく厳かな雰囲気があり、素人に難しい。佇まいに気品があって、私もこういう本をすらすら読める人になりたいものだ。滋賀は京都、奈良に近いので歴史の舞台になってきたが、東と西の巷、境い目なのだと言われて、初めて意識した。今では滋賀県が日本の中心だとは誰も思っていないが、ここはずっと日本のヘソだったのかもしれない。なみなみと水たたえた琵琶湖は、ずっと通り過ぎる人々を眺めできたのだなあ。安土城からは信長が、彦根城からは井伊大老が、今の私と同じものを目にしていたかと思うと歴史も楽しい。琵琶湖は今も美しく、人は滅んでも琵琶湖はずっとあるのだなあと思うと安心する。人間は愚かだというが、政府が、大臣が、政治家がそれを恥とも思っていないようで恐ろしい。それに比べて、自分の愚かさなんて本当に罪がないと、ヘラヘラしている。誰もみてなくても、琵琶湖は見ているぞ。いつかあの美しい水底から足を引っ張り永遠に浮かび上がらない重しを罪人に与えるに違いない。なんだかそう思うことにした。自らの心にできるだけ正しく生きることが、唯一の逃げ道なのだと思った方がいい。