NHK夜ドラ「私の一番最悪の友だち」

主演の蒔田彩珠ちゃんは「おかえりモネ」の妹役だった。鬱屈した役柄が合う、ちょっと奥行きを感じる女優さんである。お話は、関西の大学生が腐れ縁の友達と絡みながら、就活、就職、3年経って行き詰まっている話を丁寧に描いている。だんだん引き込まれていった。ほころびや嘘や見栄、些末な積み重ねの中で、転がり始める20代の主人公に好感と共感が混ざり合っていく。ダメな自分、順調に進む自分、全部ないまぜで存在している私達という存在。年を取ると怒涛のように流れて行くあの頃のこと、映画を見るように思い出す。たしかにあそこだけ時間が違う速度で流れていたと今なら客観的にそう言える。そんな不思議な感覚を蒔田彩珠ちゃんが丁寧に見せてくれている。クリーニング屋市川実日子や、実家の母の紺野まひるやら、NHKの贅沢な脇役がドラマを引き締める。あんまり大きなドラマは好きではない。ひたひたと心に寄せる波のようなドラマを見ていたい。ちょっとだけ何かを受け取りたいだけなのだ。