耳をすませば(実写版)(2022)

アニメ版を実写にしてもなぁと思って見始めた。天沢君が松坂桃李かぁとも思った。ただ途中からアニメ版を忘れて、見るようになった。バイオリニストを目指して若くしてイタリアに行ってしまうボーイフレンドとの10年間の遠距離恋愛。夢と現実のはざまで揺れ動く20代の女性を懐かしく見た。アニメ同様、実写版にもいやらしいところが微塵もなくて、空々しいと言えばそうなのだが、リアルがいつも見たいわけではない。オリジナルのアニメ世界を壊さないような配慮もあるのだろう。爽やかな映画だった。記憶は自由自在。大切な思い出も今となっては、本当にそうだったかはわからない。どんどん塗り替わって別物を事実だと思い込んでいるかもしれない。美しいものだけ思い出したい。ツライことや悲しいことは箱に入れて心の奥の戸棚にしまっておきたい。だんだん寂しくなるし、だんだん悲しいことも増えるし、どれだけ大人になっても、大人になりすぎたからこそか、悲しみは深いのかもしれない。映画では清野奈名が抜群にいい表情をしていた。彼女の笑みを思い出しながら、自分もこんな風に笑っていたいと思った。