蜜蜂と遠雷(2019)

恩田陸原作の小説の映画。ピアノコンクールに挑む若者たちを描いている。松岡茉優が挫折した元天才少女ピアニスト。破天荒なピアノを弾く天才少年に鈴鹿央士。ジュリアードから来た正統派天才に森崎ウィン。魅力的な配役。ドラマsilentからしか知らなかった鈴鹿央士君はこの映画で有名になったようだ。先日、生のピアノを聴いたばかりだからか、この映画も面白かった。岩手で働きながらピアノを弾いている青年(松坂桃李)の「生活の音楽」も素敵だった。暮らしの中にあるピアノ。生きている音楽。若い天才ピアニスト達は皆、幼い頃からピアノ以外のすべてを放棄してピアノに捧げてきた人たちだ。だからピュアでイビツなのは仕方ない。すべてのエネルギーと時間を費した先には明るい未来だけでなく、大きな闇も口を開けて待っていた。人生は至るところに落とし穴がある。ピアノしかない天才達は逃げ場がなくて、結局その闇から出るにもピアノだったりする。ピアニストに限らず、闇は私たちが落ちるのを待っている。落ちないように頑張っても、落ちてしまう。早いか遅いか、浅いか深いかの違いはある。タイトルの意味はなんだろう。蜜蜂の羽音と遠くの雷の音。喜びと怒り?葛藤と脱出?耳を澄まさないと聞こえない音たち。見る人、読む人がそれぞれに感じればいいのだろう。またピアノが聴きたくなった。この映画との出会いも来るべくして来たような気がする。出会いは大事にしなければ。