丸谷才一「大きなお世話」文春文庫(1978年)

丸谷才一のエッセイ集。1970年前後に「アサヒグラフ」に掲載されたものを集めたもの。今からもう50年前のエッセイで、社会時評風なのでどうかなあと思ったが、時代変われど嘆きは同じ。丸谷才一の巧みな語りで面白く読んだ。当時の佐藤内閣のお粗末さを嘆く作者に、「今の方がもっとひどい」と言いたい。丸谷才一はすでに故人だが、超一流の教養人だった。深い教養に裏打ちされた話は素人にも面白い。何より分かりやすく、文章がうまいので私のような読解力に欠ける人間にもするすると入ってくる。本物の力とはこういうことなのだろう。反知性主義といわれる今、全身が知的なものを欲している。幸い、コロナのおかげで読書の時間も増えた。知識を深めていくと新しい世界が広がる。物理的にはほぼ軟禁生活の今こそ、知的な海で思い切り泳ぐ時かもしれないね。もう人生の時間はそんなに残ってないから、もっと楽しいことしないとね。ぼんやり怒ってばかりじゃつまらない。