「佐伯祐三 自画像としての風景 」東京ステーションギャラリー

有働さんが高校の後輩だからか、音声ガイドしているらしい。東京駅丸の内北口のステーションギャラリーに初めて行ってきた。会場はやや狭いが、なかなか雰囲気のあるギャラリーである。佐伯祐三は昔から好きだった。子どもの頃、根津甚八佐伯祐三を演じたドラマを見て以来、ずっと好きだ。故郷の美術館で見た佐伯の作品も来ていて、久しぶりの再会を果たした。絵の再会は何やら年々感慨深くなる。佐伯祐三は、暗い灰色の空やらエゴン・シーレを思わせるような鋭い筆使いなどから、さぞかし屈折した作家なのかと思っていたが、そうでもないらしい。若い頃の自画像や初期の風景画、周りの人を描いた人物画、特に娘の彌智子の絵に見られる、まあるい赤など、佐伯祐三の別の顔を見た気がした。独自の画風を求め、それを手に入れた矢先に消えてしまった早逝の画家。パリには行ったことがないが、私のパリはこれだ。白い壁、広告の文字、佐伯祐三の絵はとても繊細だけどどっしり重い。短い生涯だが、頂点まで極めた。いや短い生涯だったからこそか。自画像としての風景。確かに彼の風景画には佐伯祐三が見える。