東京バレエ団「眠れる森の美女」東京文化会館

毎度のバレエ鑑賞。今回はストーリーが童話でお馴染みな演目。こみあげる激情などは一切ないが、ファンタジックな世界をただ楽しむ、眼福にあずかるというのかな。会場は老若男女で一杯。それぞれの見せ場では拍手や掛け声がしっかり飛び、ダンサーたちもどんどん調子が上がっていく。ロシアのウクライナ侵攻以来、チャイコフスキーは避けられていたようだ。非常事態は継続中だが、もう解禁らしい。政治と芸術は別物といえども配慮が求められる風潮。少し前のグローバルな社会のおかげで、世界中の人がいろんな場所で混ざりあって暮らすようになった。私たちの隣人たちもバラエティ豊かになった。さまざまな背景を持つ人たちと暮らす社会とは、たくさんある正解を認める社会。なるべく摩擦を失くすように、配慮し合う社会を私たちは目指すらしい。本音は決して口に出さず、耳障りのよい言葉を呪文のように唱える。やがて私たちは疲れて、じぶんに近い境遇の人たちとだけ仲良くして、ストレスを減らす。混ざり合ったひとたちはまたそれぞれの正解が確認出来る社会に戻っていく。融合から分断へ。社会も一定のリズムでこれを繰り返すのかなあ。ああ、隠遁したい。