太宰治「人間失格」新潮文庫(1952年初版)

読むものがなくなったので、無料の電子図書を読んだ。人気アイテムの上位にあるから今も人気なのだろう。若い頃一度読んだ気がしていたが、何一つ覚えていなかった。主人公の葉さんはお利口な甘ったれ。いつも自分のことで一杯で、演じることで外の世界と関わりを保つ。しかし何一つ自分の意思で動くことはない。弱虫だけどずる賢い。今の私たちにも通じるのはここ。みな人間失格なのか。以前は太宰治が好きな人が苦手だったが、今は多少理解てきる。文章も滑らかだし、話も面白いし、テンポがいい。青臭さも若さゆえ。冷静すぎる自己分析も若い甘さの裏返し。老齢の太宰が存在しないことを、ご本人が一番気づいていたのだろう。天才とは見えすぎてしまうのだね。夭逝した天才に憧れているうちに、もういつ死んでもおかしくない年になってしまった。良い意味でも悪い意味でも特別な人は少ない。多少ダメが普通。悲観せず、図々しくしててもいい。これでいいのだ。バカボンのパパはいいこと言っていたな。赤塚不二夫さん。やっぱり天才。